第84話

開け放たれた、格子の扉。


あれ程出たかった、扉の向こう──。





胸が高鳴った。


わたしは一歩ずつゆっくりと、牢屋から外に出た。


この船から出られないにせよ、牢屋の中と外とじゃ大分気分に差が出る。


扉を潜り抜けヒヤマの横を通ると、わたしはその部屋の真ん中に立ち尽くした。







「売り物の女に入れ上げても、どうしようもないのによ。まあ、リーのやつは本土に着くまで楽しもうってつもりなんだろ。」


ヒヤマはぶつぶつ言いながら格子戸を閉めると、自分の後ろにいるわたしを振り返り、ふいに押し黙った。


上から下まで、わたしをじっくり眺めるヒヤマ。

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