第83話

言葉を失って立ち尽くしているわたしを見て、ヒヤマは面白そうに広角を上げた。


「皆騙されるんだよな、あいつの見た目に。あいつは天使の皮を被った悪魔だ。それでその悪魔が、どういう訳かあんたを気に入ったらしい。どんなに女に言い寄られても、全くなびかなかったあいつが…。」






ヒヤマはそう言うと、乱暴に格子戸を全開にした。


ギギィ…と、鉄の音が響く。






「出ろよ。」


「え…?」


「リーの命令だ。お前を部屋に移せってな。」


「出て…いいの?」


「まあ、部屋を移動するだけだ。こんなとこに押し込まなくても、どのみち海のど真ん中じゃあ逃げられやしない。」

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