第61話
その時、突然ドカッという鈍い音がした。
執拗に胸に感じていた手の感触も、ざらざらとした舌の感触も、その瞬間に一瞬にして消え失せた。
顔を背けただひたすら目を瞑っていたわたしは、我に返り目を見開く。
わたしに覆い被さっていた髭面の男の姿は、もうそこには無かった。
───代わりに、薄ぼんやりと見えたのは、あの美しい男の横顔───。
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