第59話

刃の先が二つに割れた、見るも恐ろしい形のそのナイフ。





体が固まりゴクリと唾を飲むと同時に、そのナイフはわたしの胸を目掛けて勢いよく降り下ろされた───。








思わず目を反らし顔を横に背けるが、予想していた痛みは胸には感じなかった。


その代わり、ビリビリと服の引き裂かれる音がして、わたしのYシャツのボタンが辺りに弾け飛んだ───。








男はニヤニヤと笑いながら、また中国語で何かを喋った。


Yシャツのはだけたわたしの胸元はブラジャーが露になっていて、これから何をされるのかは容易に予想が付いた。








いつかの、ヒヤマの言葉が頭を過る。






『あなたは今から、ただの娼婦だ。』






──────……。







ナイフがブラジャーの中心部分に差し込まれ、強引にそれを引き契る───。

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