第51話

疑問に思ったのも束の間、急にグラリと視界が揺れた。




美しい顔が、突然目の前に飛び込んで来たかと思うと───。




渇ききったわたしの唇に柔らかいものが触れ、水が一気に口の中に広がった。






わけがわからないまま、わたしの喉は生理的な行動の赴くままに、コクリコクリと音を鳴らしてそれを飲んだ。






目の前には、灰色の美しい瞳。



互いに目と目を合わせたまま──。



唇と唇を合わせたまま───。



彼の口の中から流し込まれる水を、わたしの喉は素直にゆっくりと受け入れる───。

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