第38話

「リキ、大好き」


わたしは泣きながら、伝えたかったことを真っ直ぐに伝えた。


「知ってる」


リキはそう言うと、少しだけ照れたように笑った。







それからリキはふいに手を伸ばし、歩道の先を指差した。


「ねえ、アゲハ。あのツリー見に行こう」


どんなすごいツリーがあるのかとリキの指差す先を見れば、それは美容院の入り口に置かれたごくごく普通のどこにでもありそうなツリーだった。


子供の背丈くらいの大きさで、サンタやトナカイの飾りがぶら下がりてっぺんには少し安っぽい星のオーナメントが乗っている。







「もうちょっと行ったら、すごいツリーがあるらしいよ。電飾を何万個使ったとかの……」


思わず笑いながらそう言うと、


「そんなのいい。ツリーは、ああいうのが一番いいんだよ。なんかあったかいし」


リキは、そう答えた。







「そうだね」


リキらしい考え方だなと思って、わたしは何だか嬉しくなってそう答えた。


そしてそっと、隣にいる彼に身を寄せた。

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