第35話
それからリキは、わたしの側にいる男の子達にゆっくりと視線を移した。
男の子達はさっきまでのハイテンションが嘘みたいに、口を閉ざして萎縮した様に立ち尽くしリキを見ていた。
よっぽど、びっくりしたんだと思う。
「心配してくれたの、わたしが急にしゃがみ込んだりしたから……」
そう説明したら、リキは納得した様に少し険しかった表情を緩めた。
それからわたしの手を引き歩き出そうと足を一歩前に出しながら、男の子達に顔を向けてこう言った。
「この子、俺の奥さんなんだけど──」
冷えきったわたしの手を握るリキの手は、すごく温かかった。
「妊娠してるんだ、俺の子供」
その言葉にはっとしてリキを見れば、リキは優しく微かに微笑んでくれた。
嬉しくて涙が溢れそうになったけど、わたしも精一杯微笑み返した。
そうやって見つめ合いながらしばらく歩くと、後ろから我に返ったように男の子達がはしゃぐ声が聞こえて来た。
「うおぉ、マジかよ!」
「本物?え、本物なの?」
「リキーっ、おめでとう!メリークリスマス!!」
その叫び声に、わたし達は手を繋いだまま同時に後ろを振り返った。
粉雪が舞う歩道で、イルミネーションの光に照らされながら男の子達がわたし達に向けて大きく手を振っていた。
笑顔で飛び跳ねながら、すごく楽しそう。
彼らのそんな姿を見て、リキも嬉しそうに笑っていた。
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