第30話

───すると、その時。






「お、出て来たぞ!」


更にもう一人の男の子が叫んだ。


辺りから一斉に歓声が湧き起こる。


コンサート会場の裏手から、白いワゴン車が一台エンジン音を響かせながら出て来た。






「リキ~~っ!!」


「ハヤタぁーっ!」


男の子達が、夢中になってそのワゴン車に向かって叫び出す。


「全然中見えねぇじゃん」


「あれ誰だ?レイか?」





男の子達は不満気にそんなことを言っていたけど。


その白い車が近くを横切る際に、わたしには分かった。


3列目の後部座席のこちらとは逆側の窓側、少しだけ見えたあのシルエットは。


間違いなく───リキだった。








「あーあ、行っちゃった」


「なあ、出待ちって何か意味あんの?」








リキは───


またわたしを残して行ってしまった。

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