第24話

ふと、リビングの隅に置かれたアコースティックギターが目に入った。


その横にあるデスクはリキのプライベート空間になっていて、リキは大抵ここで作詞や作曲をしている。


無意識の内にそこに近付き、彼の匂いをたっぷりと染み込んだそのギターに触れていた。


このギターは、無口なリキがその心の中を他人に伝えるための、大事な道具。


たくさんの歌がこのギターから生まれて、たくさんの人を感動させている。


彼の……体の一部のようなもの。






わたしはそのギターの弦をそっと撫でた後で、デスクの引き出しを開けた。


わたしの前で取り出すことは無いけど、リキがそれをそこにしまっているのは知っているから。


それは、年季の入った何冊ものノート。


リキがわたしを初めて見た日から、わたしのことを想ってわたしのためだけに書き続けた数えきれない程のラブソングが綴られている。







リキは未だに、ラブソングを書かないってファンには思われている。


実際はこんなにもたくさんのラブソングを書いているんだけど、他人には聞かせたくないんだ、ってリキは言ってた。


恥ずかしい、とかじゃなくて。


これは全部、わたしのためだけの歌だからって……。

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