第15話
────……
「でもアゲハ、いつまでもリキに黙っている訳にはいかないだろ?」
キッチンに立ち尽くすわたしの横で、コウがそう言った。
香ばしい香りが、辺りに漂い始める。
「いつかは話さなきゃいけないんなら、早い方がいい」
コウの癖がかった前髪から覗く瞳が、優しくわたしを見つめる。
「リキは───」
わたしは、静かに口を開いた。
「気にしていたんだね。自分がアスペルガーだってこと」
「気にはしていないと思うよ。そうやって他人が勝手に自分につけたレッテルなんて。ただ───」
コウはそこでわたしから目を反らし、沸々と沸くコーヒーメーカーに視線を移した。
「あいつ自身が、一番知ってるんだろう。自分がどこか他人と違って、周りに馴染めなくて、世の中のルールが理解出来なかったことを。
実際リキはそれが原因でずっといじめられていたし、父親からも愛されなかった。でもあいつはいつも飄々としていて、そんなこと気にもせずに強く生きているように俺には見えた。
だけど本当は……自分が一番よく分かっていたんだよ。他人と違う辛さを」
そこでコウは、少しだけ悲しげな顔をした。
「自分のことなら、もう受け入れているだろう。だけど子供が自分と同じ思いをするって考えたら、戸惑ってしまうんじゃないかな」
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