第14話

────それ以来、リキとは子供の話を一切していない。


リキは、一度決めたことを貫く人だから。


わたしは子供が欲しかったけど、リキがそう言うなら仕方が無い、って考えていた。


だけど毎回きちんと避妊していた訳じゃ無くて。


体に異変を感じて産婦人科に行ったのが、3日前の話だ。







心の準備なんて出来ていなかったから、「おめでとうございます」ってお医者さんに言われて『赤ちゃんを迎えるために』なんてパンフレットを渡された時は、軽くパニックになった。


だけど更にモノクロのエコー写真を手渡されて、どこに赤ちゃんがいるのかを教えてもらった時────無償に喜びが込み上げて来た。


写真の中のとても小さなその存在を、たまらなく、愛しく感じた。


……そして、悲しくなった。


今すぐこの喜びをリキと分かち合いたかったけど、怖くてそれが出来なくて。


リキがどんな顔するかって考えたら……。






取り敢えず、母に電話で報告した。


母はすごく喜んでくれた。


だけどリキは子供を欲しがってないだなんて、母には言い辛くて。


悩んだ挙げ句、気付けばコウに電話してたんだ。


普通、こういうことは男の人に相談するものじゃないのかも知れない。


だけどコウは、リキのこともわたしのこともよく知っているし──男の人だけどこんなことを話せるような雰囲気を持っているから……。

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