第12話

「俺は大丈夫だと思うけどね。あいつはきっと、アゲハのことなら何でも受け入れる」


コウはわたしの手からコーヒー豆を奪い、代わりに続きをしてくれた。


彼がスイッチを押すと同時に、コーヒーメーカーから微かな機械音が響いた。







「でも、電話でも言ったけど……前に言われたから。『子供はいらない』って」


「でも出来てしまえば、気持ちなんて変わるものだと思うよ」


「だけどリキの場合は分からなくて……。不安で」


「そう」








────あれは、結婚して間もなくの頃だった。


何となくだった、それを口にしたのは。


だって毎日そういうことをしていれば、きっと自然と出来るものだもの。


「子供は何人欲しい?」って、じゃれ合いながら、ごくごく普通にそれを聞いてみたんだ。


するとリキは顔をしかめて、こう言った。








「子供はいらない、アゲハがいればそれでいい」って─────。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る