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第9話

────……



「おはよ」


玄関のドアを開ければ、相変わらず綺麗な顔をしたコウが微笑みを浮かべて立っていた。


黒いコートに濃い緑色のチェックのマフラーを巻き、黒ぶちの眼鏡を掛けている彼は今日も相変わらず一際オシャレだ。


「どうしたの?こんな朝早くに」


今ではコウとはリキと一緒にたまにご飯に行ったりはする仲だけど、家まで来るなんてことは滅多にない。


だけどそう聞きながらも、わたしは急にコウが来た理由に薄々勘付いてはいた。






多分……いや、絶対そうだ。


わたしが数日前、『そのこと』をコウに電話で相談したから。


きっとコウはそれで、多忙なスケジュールの合間を縫って会いに来てくれたんだ。







「リキは?まだ寝てる?」


「起きてるよ」


「そう」


コウは、しばらくの間白い息を吐きながらじっとわたしを見つめていた。


その目を見て確信した。


コウはやっぱり、わたしを心配して来てくれたんだ。








「ケーキ、買って来たんだ」


コウは大きめの紙袋を、少しだけ掲げてから微笑んで見せた。


「上がっていい?」

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