第5話
わたしとリキには、『お揃いのもの』が無い。
結婚式もしなかったし、婚約指輪や結婚指輪なんてものも無かった。
そんなものをわざわざ『形』に残さなくても、リキがどんなにわたしを想ってくれているかは充分に知っている。
リキは『形』なんかより『気持ち』の方が大事なことを分かっていて、結婚して3年、一緒に住んでもう随分経つけど、今でもわたしだけを大事にしてくれている。
だからわたしも、『形』になるようなものはリキに何も求めなかった。
だけどリキのそのタトゥーを見た時、急にリキと同じものを体に刻みたくなったんだ。
ツアーで長い間離れていて寂しい思いをした後のことだったから、っていうのもある。
リキと同じものが常にこの身にあれば、ずっと彼と一緒にいれるような気がして。
……例えそれが、まやかしであっても。
だから思い付いたように「タトゥーを入れたい」なんて言ったんだけど一刀両断されてしまって、一瞬ムカついてしまったのを覚えている。
───朝の冷たい空気の中、少し青っぽいその『無限』マークに唇を寄せながら、そんなことを思い出していた。
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