第88話

甘い声とうっとりする程のビジュアルに、感極まるファン達。


彼らの音楽を聞いていたら、自然と胸の奥がざわついた。


───正直ビジュアル重視のバンドだと思っていたから、申し訳なく思った。


所詮は、高校生の音楽だろうと。


ビジュアルもさることながら、彼らには実力も兼ね備えている。






興奮して体を動かす人達の間で、わたしは一人じっと佇み彼らの曲を聞いていた。


わたし一人が圧倒されて、その場に溶け込めずにいる。


演奏しながらも時々コウ先輩が笑顔を見せると、女の子達が一斉に悲鳴を上げる。


───まるで別世界。


ステージ上の彼らと、彼らに酔いしれ一体化したファン達と、そして取り残されたわたしは。


───住む世界が、まるで違うと思った。

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