第89話

一曲一曲と歌が終わっていくけど、中田くんと木村くんは帰って来なかった。


というより、はじめにいた所からは押されて大分移動しちゃったし、これだけひしめき合っている会場内でわたしを見つけ出すなんてことはもう無理だと思った。






───何曲終わっただろう。


汗で濡れた髪をかき上げ、一息ついてからコウ先輩が一言マイクに向かってこう言った。


「次で、最後の曲になります。」







「いやだー!!」


「コウさーん!」


「リョウ~っ!!」


「終わらないで!!」


辺りが一斉にざわめく。


そんなファン達にコウ先輩は優しく微笑みかけると、ギターを別のものに持ち換えた。






「今までとは雰囲気が違うけど、聞いて下さい。」


そう伏し目がちで言ったコウ先輩は、ピックを手にリズムを奏で始めた。


続いてリョウさんがギターを鳴らし、ベース、ドラム、と音が加わる。

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