第65話
「アゲハちゃん、ちょうど良かった!」
コウ先輩はわたしの前まで真っ直ぐに歩いて来ると、笑顔でそう言った。
急に押し黙った隣の集団の視線が痛くて、わたしはどうしたらいいのか分からなくなる。
「明日さ、空いてる?」
わたしの動揺なんて構わずに、コウ先輩は爽やかな笑顔で話を続けた。
いつもは息を付く間も無いくらいに忙しいんだけど、明日は土曜日だからバイトが無い。
勉強のために空けてるんだけど、空いてるかと聞かれれば空いている。
「空いてますけど……。」
何故そんなことを聞くのかと不思議に思いつつもしどろもどろに答えると、「ほんと?良かったあ!」と先輩は屈託なく笑った。
本当に、騒がれるのも良く分かる。
───先輩は、間違いなくかっこいい。
華があって、他の高校生には無いオーラがある。
コウ先輩はポケットから財布を取り出すと、それを開けた。
取り出されたのは、2枚の小さな長方形の紙。
「俺さ、バンドやってるんだけど…。」
今更なことを、先輩は言い始めた。
「明日ライブがあってさ、君に来て欲しいんだ。俺らの歌を聴いて、感想を聞かせて欲しい。」
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