第60話
お風呂上がり、通りかかった母の部屋からすすり泣く小さな声が聞こえた。
胸が、ぎゅっと痛くなる。
目を伏せ足早に部屋に戻ると、ベッドに入り布団に潜り込んだ。
───ああ、今日も1日本当に疲れた。
すぐに眠りに落ちかけたわたしの頭の中に、また彼らの姿が甦った。
コウ先輩の笑顔と。
噴水の脇に座る、グレーのパーカーの彼と。
中田くんの、吸い込まれそうな黒い瞳───。
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