第56話

そんなことを考えながら、彼の頭を見つめていると───。


突然、彼がしゃがんだまま顔を上げた。


そして下から、静かにわたしを見上げた。






ドクン、と胸が鳴った。






彼の鼻筋はスッと通っていて、薄い唇は少し開いていた。


目は想像よりもずっと切れ長で、その中にある驚いた顔をした、わたしを映した2つの瞳は──。






想像通り、黒かった。


深いくて汚れのない、綺麗な黒。


────まるで、いつか見た夜空のように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る