第47話

そして、駅前に行くようになって2ヶ月が過ぎたある日。


気付けば終電ぎりぎりまで歌っていたわたしの前に、いつしか5~6人くらいの賑やかな若い男の人の集団がいた。


派手な髪色にズラされたジーパン。


煙草を片手に、にやにやと嫌な笑みを浮かべてわたしを見ていた。


帰ろうとしたわたしに、その中の一人が「ええ~、もう帰っちゃうのお?もうちょっと弾いてよ。」と声を掛けてきた。







その人の口元は笑っているのに、目はすごく冷めていて少しも笑っていなかった。


それが不気味で怖くて、わたしは「終電があるので。」と小さく呟いた。


「それなら、車で送ってあげるよ!だから俺らと遊ばない?」


「ていうか高校生でしょ、すげー若いよね。かーわいい。」


その人たちは突然、すごく慣れ慣れしく口々に話し掛けて来た。


断っても断っても、本当にしつこかった。







その内、手をがっしりと捕まれて「いーから、行こうよ!」と無理矢理引っ張られた。


「やめてください!」


怖くなって、精一杯そう叫んだ時。


突然、鈍い音がしてわたしの手を掴んでいた人が一瞬で消えた。






驚いて顔を上げたわたしの目の前。


ほんの、目と鼻の先に。


────薄いグレーのパーカーの、背中が見えた。

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