第40話

呆然としたまま、自分の席に戻った。


すると、すかさず興奮気味のユイが顔を真っ赤にしながら聞いてきた。


「アゲハ、まさか付き合ってとか言われたの?やっぱり先輩が見てたの、アゲハだったんだ!」


「いやいや、違うって!そんなんじゃない!」


慌てて、首を左右に大きく振る。


胸がドキドキとうるさい。







先輩、わたしを知ってたんだ。


歌を、聴いたんだ。


───あの駅前で。







「じゃあ、何話してたのよ?」


いつになく真剣な顔で、ユリナが聞いてきた。


綺麗にメイクされた顔が、わたしの心を見透かすかのようにじっとこちらに向けられている。




「それは───。」


口を開いて、すぐにつぐんだ。


言えない。


このことは、誰にも言いたくない。


自分だけの、大事な秘密だから。







押し黙るわたしに、ユリナが不満そうに漏らした。


「何?わたし達には言えないわけ?」


「ごめんね……。」


下を向くことしか出来ない。


「え~!なになに?教えてくれないのぉ?」


ユイも、口を尖らせる。

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