第39話

頭が真っ白になった。







それは、もしかしてあのこと?


どうして、知っているの?







あからさまに、目が泳ぐ。


動揺で頭の中がぐるぐるしていて、何も答えられない。


そんなわたしを見て、先輩は色っぽく笑った。






「すごく、上手かったのに。また歌ってよ、あの駅前で。」


そう言い残し、立ち尽くしたままのわたしを置いて背を向けた。


そのまま悠々と廊下の先へと消えていく。







ひそひそとした黄色い声を浴びながら、去って行く先輩のスラリとした後ろ姿。


わたしは、それから目が離せなかった。







どうして、知ってるんだろう。


まさか、わたしを見たことがあるの───?

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