第36話
ユリナも、またすぐに笑顔を見せた。
わたしも、つられて少し笑ったけど。
胸の奥底には、得体の知れないモヤモヤが渦巻いていた。
「あ、コウ先輩来た!」
すると、ふいに廊下の方を見たユイが突然声の抑揚をガラリと変えて言った。
なるほど、いつの間にか周りがキャアキャアと騒ぎ立てている。
「うわ、今日もキャアキャアうるさいな~。」
ユリナのそんな声が聞こえたけど、わたしは皆が関心を寄せているコウ先輩の方は見ずに、また徐に後ろを見た。
───中田くんは、教科書を見るのをやめて、頬杖をついて窓の外を見ていた。
窓から差し込む真昼の光が、彼をぼんやりと白く照らしている。
ああ、やっぱり。
教室中の今の喧騒なんて全く気にせず自分を保つ彼は、その名の通り、見えない力で満ち溢れているように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます