第19話

授業が全て終わり、やっとホームルームも終わった。


わたしは今日も、誰よりも早く帰らなくちゃいけない。


「ばいばい、ユリナ、ユイ。」


後ろの席のユリナと隣の席のユイに、手短に別れを告げる。


「今日も相変わらずの早さね~。」なんて呟くユイの声を背中で聞きながら、わたしは教室を飛び出した。





走らないと、間に合わない。


バイトの時間に。





そして、バタバタと廊下を駆け靴箱に辿り着いた時。


わたしは今日も、彼を見つけてしまった。





いつも、不思議なんだ。


同じクラスなのに。


誰よりも早く教室を飛び出している筈のわたしを、彼はいつも悠々と抜かしている。


真ん中辺りの席のわたしに対して、彼の席は一番後ろだから、なんだろうか?





───それにしても。


ハアハア言っているわたしに対し、彼は今日も息切れ一つせずに靴箱から靴を取り出そうとしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る