第15話

「でもさ、うちらのクラス噂になってるんだよ。」


突然、ユイが声を潜めた。


「このクラスに、コウ先輩の好きな子がいるんじゃないかって!じゃなきゃ昼休みの度に、ああやって覗きに来たりしないでしょ。」


「うん、なんか気味悪いよね。」


「こらっ、ユリナ。こんな近くで見れてありがたい話しでしょ!でも、その思われてるコがうらやましい~、誰なんだろ。」


しかめ面のユリナに、くやしそうな顔のユイ。







───そうなんだ。


今は、少し吹く風に夏の匂いを感じ始めた5月半ば。


わたし達は、この高校に入学してまだ1ヶ月半ってとこなんだけど。


コウ先輩は、入学してから殆ど毎日、この教室に来ていた。






1日に1度だけ。


誰と話すわけでもない。


その風貌と名声から、周りの後輩達の視線の雨を浴びながら。


ただじいっと、5分程度廊下からこちらを覗き、黙って帰って行く。

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