第14話

「はあっ、今日もかっこいい……。」


わたしの目の前で、ユイが広げたお弁当に手をつけるのも忘れてうっとりと呟いている。


「わたしはやっぱり、あんま好きじゃないなあ。歌は好きだけど。」


それに相反して、興味なさげに相変わらず髪をいじっているユリナ。


「あれ、ユリナ、MCの曲聞いたの?あれだけコウ先輩のこと悪く言ってたのに。」


すかさず食い付くユイに、ユリナはちょっと上を向きながら答えた。


「友達に、CD無理矢理貸されたのよ。別に聞きたくなかったけど。でも思ってたよりずっと良かった。でもあの顔は好きじゃない、だって絶対遊んでるじゃん。」







ちらり、わたしはまたコウ先輩を一瞥した。







薄い茶色のふわふわの髪に、男にしては白い肌。


切れ長だけど大きめの瞳に、紅い唇。


線の細い身体と、どこか気の抜けたようなラフな佇まい。


なるほど、女の子に騒がれるのもわからないでもない。


今すぐにでも俳優になれちゃいそうな風貌だもの。








だけど、女の子達が騒ぐ理由はそれだけじゃない。


地元では有名な、高校生ながらもインディーズでデビューしているというロックバンドMar's Company(マーズカンパニー) 、通称MC(エムシー)のボーカル。






───それが、コウ先輩。

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