悪鬼羅刹の嫁入り

@Pippi_8989

第1話

神無月。寒さも徐々に出てきて、もう直ぐ秋に終わりを告げそうな頃。

 私は一人でアテもなく森を歩いていた。



「おぅ〜い。何してるんだ、こんな所で!」

 不意に後ろから声がかかる。声の主は私の許婚であるレンだ。何時もより綺麗にセットされた髪を靡かせ走ってきた。

そして「危ないだろ」と怖い顔で怒っている。


でも知ってる、こう言うと良いって事。

『貴方が見つけ出してくれるからいいの。』

そう笑うと案の定レンの機嫌は良くなった。


夕陽の方向に向かって一緒に歩き始める。

「いっつもこの森に居るよなぁ。」

 行く日ぐらい言わないと不安になる!と拗ねる彼。拗ねた表情に合わず手はずっと繋がれていて。本当に、



【気持ち悪い】なぁ...

その傲慢な態度も、疑い深い性格だって大嫌いだよレン。

 でもまだ貴方が必要だから愛してあげる。


「どうしたんだ?」

腹に溜まった歪んだ憎悪を隠すために、貴方の後ろの陰に隠れる。だって今バレたら面白くないじゃない。

『眩しくって...お願い。ダメ?』

 彼の赤い耳が見える。本当に騙しやすくて助かったよ、レン。


 真っ赤な夕焼け空が包む森には、騙された羊と騙した羊の長い陰と、“獣の様な人間”の陰がのびていた。



さぁ。本当の化け物はどっち?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪鬼羅刹の嫁入り @Pippi_8989

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ