第10話 第2試合幕間

ふぅ。

控室にどうにか戻ることができた私は、盛大に息を吐き出す。

疲れたぁ~。

いきなり第1試合からなんて、ほんと運が悪いよね。

しかも相手は大巨人のジャイアント・アイ。

二三mの巨人なんて普通に考えたら勝てるわけないじゃん。

身長は当たり前だけど体重差なんて桁が三つくらい違うだろうし。

私の体重はおじいちゃんの千里眼でもわからない(と思いたい)永遠の謎だけど。

それでも、どうにかこうにか勝つことができて本当に良かったあ。

……って言いたいところだけど、控室のソファから一歩も動くことができない。

疲労困憊って表現はきっとこういう時に使うんだと思う。

さっきから汗がダラダラ流れてすっごく喉が渇くし、全身に力が入らない。

お気に入りのお洋服がアイのビームで黒焦げだし、皮膚もかなり火傷している。

クッキーの盾とかクリームのジェット噴射とか、とにかく魔力を消耗した。

魔力が回復すれば回復魔法もできるから傷も癒えるだろうし、今は何も考えず、何もせずとにかく横になっていよう。

そうすれば2回戦には備えられると思うから。

それにしても、私が勝利できたのは夢みたい。

「目」っていうわかりやすい弱点はあったけれど、それを込みでも勝利できたのは嬉しい。おじいちゃんにもアンさんにも、誰の力も助言も受けずに自分の力だけで手に入れた勝利。チュニックのポケットに入っていたキャラメルの包みをはがして、口の中に放り込む。

甘いミルクの優しい味が口の中にしみ込んで、幸せ。

これがきっと勝利の味というやつなんだね。

ジャイアント・アイも試合終了後には握手を求めてきたし。彼は今まで自分だけが世界最強と信じてきたけれど、私に敗北して認識を改めたって。

「上には上がいる」かぁ。

あの巨体なら世界最強だって信じても不思議じゃないけれど、彼にとっては衝撃だったのかもしれない。私にはいつも身近におじいちゃんがいるから、世界最強という言葉の響きにピンと来ない。とりあえず、今の私にできることは残りの試合を備え付けのテレビで視聴することだけ。

えっと、第2試合の対戦カードは……

『世界一の怪力男』カマン・ベールVS『鬼教官』ジョナサン・スコッチ?

なんだか凄そうな異名だけど、どんな人達なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る