第13話[経験者と初心者]
翌日のベトナ遺跡の鉱夫寮、他国のスパイ達はルークの用意していた書類を持ち去る事無く居なくなっていた
「やれやれ、
「アイツらにもそれなりにプライドってのがあったんだろ?レオンはどした」
「レオンさんなら出迎えに行かれました」
その
「来たか」
後続隊のメンバーは戦士
「
[一流は一流を知る]様に互いの力量を推し量る。先に口を開いたのはセルジュだ
「彦、剣
レオンはセルジュの挨拶で差し出した右手を握る
「なるほど、強いですな」
「いやはや、貴公もなかなか。
「早くルークと合流せぬか?待たせるのも悪かろうに」
「···それもそうだな」
騎士団詰所から続くベトナ遺跡脇の東屋。そこから数分歩くと炊煙が上がる二階建ての建物が見える
「セルジュさん!彦十郎さん!お久しぶりです!」
「ルークか?老けたなぁ」
「それはお互い様でしょう、
「カインの事か?まだまだヒヨっ子だよ。なぁ?」
「一騎当
「とにかく腹ごしらえしながら話しませんか?2人の事ですからアレコレ理由をつけて日頃の鈍った身体の鍛え直しに伺ったのでしょう」
「はっはっはっ!見抜かれておるわ」
「ルーク」
「どうしました?セルジュさん」
「
「アレから全く使えてませんよ、諦めて基本の威力を高めたり自然現象を応用してます。どうやらボクには基礎しか出来ない様です」
「
「基礎ですよ、筋肉に微弱な雷を流して強制的に身体を動かす···正式な使い方じゃないですけどね」
先程から同行しているディアナの目には
「全く、レオン師匠と冒険者の間でも伝説級のセルジュさんと彦十郎さんが揃ったら
「どうでしょうね。我々が
ルークの言葉に空気が一瞬凍り付く
「ルーク、矢張りお前はここを使って周辺国へのカードにするのか?」
「
「それは、どういう意図なんですか?」
「我々
異界の生物を物理的に
「
ルークが膝を震わせながらも声を絞り出す
「ルーク···」
「正直、ボクにとって
ルークは魔術師ギルドで買っている[
「コレが遠隔で見たベトナ遺跡に封じられた
ルークは指をパチンと鳴らすと数本の羽根ペンは生命が宿ったかの様に机に大きく拡げた紙のリンクを滑り踊るフィギュアスケーターの様に華麗に描き上げる
「便利なモンだな」
と思って居たのも束の間、ルークの様子がおかしい
「おい?」
ルークの顔から血の気は失せてしまい羽根ペンを動かす集中力も途切れて膝から崩れ落ちる
大きな紙には玉座らしき物に座った3人が中央に置かれた丸い何かを向いた姿で描かれていた
「コレがボクの見たこの遺跡が封じられるべき理由···」
神殿の柱に見られるドーリア式の神々しい玉座に座る金属の身体を持ち右腕に大きな大砲を備えた[神の台座]智天使メルカーバ
骨で象られた禍々しい玉座に座り頬杖をつく右に猛禽類、左にコウモリの合わせて12枚の翼を持つ神々しくもどこか邪悪さを感じさせる[神の影身]堕天使ルシファー
開いた蓮の華に
それぞれが何故か中央に置かれた球を見ており。足元には恐らく
「コレがボクの見たベトナ遺跡に封じられたモノです」
「モンド殿もご存知で?」
「ああ、昨日ルークから聞いた。」
「ルーク···」
ルークは自らを守る様に自分の肩を肉に食い込む様に鷲掴みにしている、それを見かねて治療術士が
「流石に
「分かって貰えて何よりです」
「だが、封印に関しては俺も同席させてもらう」
「そうですね、1度向かわねばならんでしょう」
相談の末、挟撃を見越して前衛はセルジュ・モンド・レオン、中衛はルーク・探索者・治療術士、後衛はディアナ・彦十郎となった
猫の姿のままのモンドが先導し、地下2階と地下3階を隔てる封印の入口に到着すると
「···
「どう見ても
背丈は大陸で見るオーガと同じだが紅い肌で筋骨隆々、額には鋭い角が2本生えている。ほぼ全員が初めて見る中で彦十郎だけが冷静だ
「そうでは無い!あれは
羅刹は両手に持った鉈の様な刀で襲いかかるがセルジュが前に出て
「どっ···せぇい!」
持ち前の
「ヒュウ、流石は
「当然だ。俺はファルザードの盾だからな」
あっけらかんと強がっては居るが受けた衝撃はしっかり左腕に残っている。左手を軽く何度か握り、骨や筋肉に異常が無い事を確認する
「ルーク、入り口を封じろ!彦はルークのサポート、レオンとディアナは両翼から攻撃!」
セルジュが凄いのは人間離れしたフィジカルもそうだが、その場の状況を瞬時に把握して一番リスクの低い戦略を立てる判断力にある。大きな戦争で本陣で戦略を立てる軍師が[静]ならばセルジュは[動]の現場監督だ、その上···
「1分···いや、30秒で良いチョイと耐えてくれ」
「「分かった」」
レオンはラクシャーサの攻撃をカウンターでいなしつつディアナの嵐の様な連撃で追い詰める、だが余程ラクシャーサがタフなのかどれも決定打に欠ける
「
セルジュの精霊魔法で限定的にレオンとディアナの武器に[風]の属性を付与させる、すると先程まで浅かったダメージがしっかり通る様になっている
(コレなら···勝てる!)
「見た目通り物理耐性のパワーファイターだ、
セルジュが使役する精霊達には相手を調べるのも居る、流石に戦いながら調べるのは難しいようで時間を作って貰ったが
━━パキィン!━━
風の精霊は屋外で真価を発揮する精霊、坑道や屋内ではその力は発揮するのが難しい。最上位精霊と契約出来るセルジュだからこそ数分もったのだ
「チッ···流石に無茶させたか」
するとセルジュの背後からジャラジャラと鎖の音を鳴らしながらその軌道は蛇が獲物を狙う様に回転したラウンドシールドがラクシャーサの首を刎ねる
「大丈夫ですか!」
「ルーク···お前がやったのか?」
(さっきまで
「はい、セルジュさんが風の精霊を使われていたので咄嗟に
「封印は!」
「モンド師匠が仕上げをされてます」
「探索者、
「···今の所、さっきの鬼レベルは居ませんね」
「そうか、それにしても剣聖と剣竜。流石、噂に違わぬ戦いぶりだ」
「いや、セルジュさんの観察眼が無かったら苦戦してましたよ」
「おだてても···って、あれ?
「奥底に眠ってるのを100と例えると、さっきの
「そうなると俺は120って所か?」
セルジュがカラカラと豪快に笑うも彦十郎は冷静に
「
「······バラすなよ」
「正直言ってあのラクシャーサに勝てたのはチームの連携があったからです。セルジュさんが見つけた弱点属性が分かったとしてもボク1人では無理です」
封印の仕上げを済ましたモンドが更に続ける
「
「やれやれ…あわよくばここの遺跡をファルザードのモノにしようって思ってたのにこれじゃあ使いもんにならねぇな」
「セルジュ!貴様っ!」
「彦十郎さん、セルジュさんの言う事ももっともなんです」
「お人好しが過ぎるぞ、ルーク!」
「
ルークの指摘にセルジュも彦十郎も二の句が継げない。確かに魔物と一括りにしても中には地上の
そこで世界主要国、特に遺跡を保有する国は[遺跡条約]を締結し、保管管理は元より
ファルザードには古参貴族ウッドランド家と契約した精霊、
「封印も済ませたのなら
「それはまだ早い」
「モンド様?」
「ベトナ遺跡の事は大多数の帝国民には知らされていない、余計な混乱を回避する為に地震による落盤という事で情報を制限しているからな」
「でも、いつかはバレるでしょうな」
「それを見越して賢聖アルテア様なら今頃何かしらの策を見出してる筈だ」
「再封印もしましたしとりあえず戻りましょう。モンド様が正式に封印を施したので簡単には出ないでしょう、後は···」
「鉱山の外に出た
「ありがとうございますディアナさん」
こうしてルーク達は
了
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