第12話[本音と建前]
「ところで、呼び出した
セルジュがジェイムスに問いかけると奥の方から歓声とどよめきが聞こえてくる
「セルジュ=ウッドランド卿、
リズの装いは薄紫のエンパイアドレスに肩掛けのショールの代わりに帝国騎士団のマントを羽織り留め具には何故か皇帝家の紋章を
「ルークの野郎···そう···来るか」
「これは···なかなかどうして」
〘同盟とルークの朋友いう枷が無ければ帝国の
と言うリズの···いや、帝国を代表する静かな
「立ち話もなんでしょうからこちらに。各隊長は各自の判断で解散」
しかし、誰一人としてその場を離れようとはしなかった
「セルジュ殿、これでは迂闊に手出し出来なくなりましたな」
「フン···ところで
「御子息達ならば騎士団詰所へ稽古に向かわれましてございます」
そして、その
「たーのもー」
フランクに接するカインに対し門兵は毅然と対応する
「恐れ入りますが、アポイントか紹介状はございますか?」
「アポイントは知らぬが、訓練場のみの利用許可を
「拝見させていただきます···確認しました。ようこそマグナス騎士団へ」
空練にとって初めての海外でしかも異国の剣道場、立てかけた見慣れぬ武具にテンションが上がらぬ訳が無い
「おお!来たか、若造共」
新兵を教える軍曹が手を止め、カイン達を迎えてくれた
「こんなに早く来れるとは思っておりませんでした」
「確かローディス子爵の招待だっけか?
空練の目に訓練場の横で少年を指導している若い女性が写る。空練は道場主の父親に何度掛け合っても入門が許されなかったので少し少年を羨ましく思っている
「軍曹殿、ここはあんな女子供にまで門戸を開いておるのですか?」
軍曹は空練の何気ない質問にビビり小声で
「この際、良い機会だから言っておく。あのお子は
「でも
「ハミル!ちょっと良いか?」
「なんですか、軍曹」
「この
「軍曹、ボクは見てても良い?」
「かしこまりました。誰か王子に椅子と客人に訓練用の木刀を見繕ってやれ」
若い兵士は空練を保管庫に連れて行き一通り見せた中で空練が選んだのは廃棄された建設用足場板を素振り用に
「あの体格で
「多分、身体の小ささを補う為の
「見なくても分かる」
「お前はどっちだ?俺はハミルさん」
「それじゃあ賭けにならん、ハミル殿は剣士として我々より1歩先んじておる。剣の質が違う」
空練は大木刀を軽々と上段に振り上げ大きく吐いた気合いの声と同時に振り下ろすが、アリスは真横から大木刀に足を乗せてその勢いのまま横回転して空練を横薙ぎに打ち付けた
「ぐおっ!?」
本来ならアリスの回転斬りで吹っ飛ばされる
(ウソでしょ?フィリップ隊長とはいかないまでも私の回転斬りを
「参り···ました」
空練の敗北宣言でその場はアリスに軍配が上がるが勝ったアリスはどうにも
「軍曹、この立ち合い私の負けです」
その場に居る全員が耳を疑った
「
「違うわよ、キミが普段使ってるあの刀で対峙してたら私はあんな戦い方をしなかった。キミも貴方達も
アリスはピエール王子を連れ訓練場を後にする
「ハミル、ボクはハミルが無事で良かった。ルーク先生も
ピエールのあどけない笑顔がアリスの
「流石は
「帝国に来るまでは某もカイン殿も[身知らずの口叩き]でござった。空練にも見聞を知って貰おうと父上と
「幻十郎、そこは[井の中の
「それには[されど空の青さを知る]と続きがごさってな、我々は己が流儀を極めてはおらぬゆえ蛙にすらなっては居らん」
そして宿の一室ではリズとセルジュと彦十郎の3人が一同に介している。無論、室外からの盗聴を警戒し
「
「さっきのは違うのか?」
「アレは
「なるほど、
「ベトナ遺跡の事は既にご存知かと」
「報告書には手練の冒険者でも手に余るから、許可を得ず勝手に入ったら助ける事は出来んって書いてあったな」
「それにルーク殿はその遺跡を封じる為に事故に遭われたそうだが」
「セルジュ卿と彦十郎殿だけには伝えて欲しいと言われておりましたのでかような場ではございますがご容赦ください」
リズが深々と頭を下げると
「まったく···ルークの奴ぁ
「ありがとうございます。コレは私も半信半疑なのですが先生は御二人なら聞いてくれると信じておりましたので、そのまま言わせていただきます」
リズは2人にルークが見聞きした事をそのまま伝えると2人の表情が固まる
「コレは
「全くだ、今回ばかりはルーク殿が悪い」
「と···おっしゃいますと?」
「リーゼロッテ殿は御存知でしょう?ファルザードと
「ええ、聞き及んでおります」
「
「それでは我が国でも同じ様にすれば···」
気が
「建立し人の深層意識からその場を畏れさせるにはそれなりの理由が必要だろう、ただ[危険だから]とか[鉱夫の慰霊]だとパンチが弱い」
「黄泉比良坂は冥界の入口として理由はありますし、虚空遺跡はセルジュ殿が荒神と化した土地の山神を封じましたからね」
「あー、あん時ゃ
「先生がそんな事を?初めて知りました」
「そん時ルークの奴「故郷で学校の先生になります」ぅ〜とか言ってたクセに今じゃ子爵の片手間に修理屋やってんのかよ」
「実際、教師はされてました。私も6年間お世話になりましたから」
「あ、そうなんだ。だから
「某も違和感を覚えておりましたが成程、そういう間柄でござったか」
「しかし、遺跡を封じるのに神殿を建立するのは良いアイデアなのですが···
「あー···ソレがあったか」
彦十郎は渋い顔をするセルジュに問いかける
「何ですか?その如何にも怪しい団体は」
「倭でも居たろ?博之上人と大天狗党というケチなテロリストが」
「そういえば居ましたね、あの時はルーク殿に我が殿が助けられましたな」
「その時も大怪我してたよな?確か···背中をこうズバーって。
「それがあの背中の傷だったんですね」
「彦十郎、俺ぁ滞在中ベトナ遺跡に向かう。お前も行くだろ?」
「愚問ですな、ルーク殿なら我々を連れてくでしょうし」
「先生の事、分かってらっしゃるンですね」
「そりゃあ立場はあれど
「それでは明日、案内役を使わせますのでベトナ遺跡へどうぞ。騎士団詰所にベトナ遺跡直通の
「そういう便利なモノがあるのか!?」
「いえ、帝国には時を
「では、土地の冒険者ギルドには私から話を通しておきますので。明日の朝お迎えにあがります」
リズは一礼して宿を後にする、2人はその後ろ姿を見送りながら
「あの器量、胆力。ルークの奴にちょうど良いな」
「自己肯定の低い奴ですからな、確かにあのぐらいでよろしいかと。さて某は明日の準備でも致そう」
「久しぶりだな、
「ええ、
その部屋の片隅で燭台の影がスッと動いたのを
「どうかなされたのか?」
「
「恐らく護衛と伝令でしょうな」
「だとしてもだぞ、ここからベトナ遺跡までどれだけ離れてると思ってンだ?流石の俺でも半径1kmがギリだ」
「本当に恐ろしい奴になったものよ」
ベトナ遺跡、鉱夫寮
ルークは塩と香辛料に漬けた干し牛肉と天日で乾燥させた食用キノコに干した麦、近場で採れる野草を煮た簡単な麦雑炊を作っていると
「そうか、
「どうかしたのか?」
モンドに人間用の食事は塩分が高すぎるので坑内に徘徊していた
「ボクが尊敬する
「逆に
「居ますよ、ただモンド様の近くに居られないだけで」
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