ティスのおむかえ
「…む、お前は誰だ!」
「マ、マシロ!?なんでここにっ―」
剣を交えた当の本人のおっさんは、驚いた顔で後ろへのぞけった。
ティスは驚いているが、今はどうでもいい。
―さすが、SSS?ランクの剣。すごく頑丈だ。
おっさんは、ギロリと僕をにらみつけた。
「お前…何者だ。その剣、素人が持っていい代物ではないぞ」
僕は剣を地面に突き刺しながら言った。
「勘違いしないでもらえるかな。僕にはこの剣を持つ権利があるんだよ」
だって僕が育てたやつだしね!!!
おっさんの後ろにいたやつらが、怯えた表情を浮かべる。
「団長…っ。あの剣、SSSランクのものだと!」
「SSSランクだと!?」
おっさん、団長だったのか…。
やっぱりSSSランクってすごい価値なんだな…ティスも言ってたけど。
と、急に肩を掴まれた。
「マシロ!あんたなにしてんの!?さっさと寝ときなさいって言ったでしょうが!」
「えっ、ええ!?だって!」
シンパイで―とか言えない!!
笑われそう!!
いじいじと白髪の髪をいじる。
ティスは僕の顔をジロジロと眺めたあと、はあとため息をついた。
「…でも、…た、助かったわ。ありがと」
ティスの頬が赤く染まる。
「う、うん」
それを見て、僕は思った。
…ティスって、ツンデレなのかな…?
お礼言おうとするとなんか照れるし。
いつもツンツンしてるけど、今みたいにたまにデレる(?)し。
…と思ったのは、僕だけのヒミツである。
今は、このおっさんたちだ。
「ねえ、おっさん」
「おっさん!?」
おっさん呼びしたら、当の本人が一番驚いてめちゃくちゃ怒っていた。
いやそりゃそうか。
一応団長?らしいし…。
「この無礼者!団長に向かっておっさんとはどういう根性をしているんだ!」
「…いや、でも…おっさんなのは間違ってないですよねっ…」
「それは認める!」
「認めんなこのバカたれぇ!」
おっさんがツッコむ。なんだこりゃ、ネタか?
でも、おっさんのヒゲいかにもおっさんらしいし…おっさんだよな。
おっさんが、「えー、ごっほん」と咳払いする。
「…紹介が遅れたな。わたしたちは天使族の里の騎士団だ。いつまで経っても帰ってこないティスをむかえにきた!」
「…もう手遅れだよ。ティスは僕の仲間だ。無理に里に帰らせるというなら、僕が死んでからにしろよ?」
…こういう決めゼリフ、一度言ってみたかったんだよなぁー!!
決めれたかな?決めれたよな!?
ちょっぴり内心興奮しながらも、ギロッとおっさんたちをにらみつける。
ティスをバカにしたのは許さない。
シャキン、と音を立てながら、剣の先をおっさんたちに向ける。
さっきは運よくおっさんの剣を止められたけど…。僕は武道なんてできない。
だからここはひとつ、脅すか!!
「お前らもさっき言ってたけど、これ、SSSランク級の剣なんだ。切れ味もヤバいから…首を斬り落とすことくらいカンタンなんだよなぁ」
「なっ…!」
さすがに怯えたか?
おっさんを含む天使族が、怯える瞳で剣を見る。
脅し完了。
これでさっさと引いてくれればいいんだけどなぁ…。
が。
「そ、それがなんだというのだ。たかが脅しだろう」
まあそうなるかぁ…。
さすがおっさん。こういうのは慣れているのだろう。
相手は、もう襲い掛かってきそうな勢いだ。
こうなったら、最後の手段。
僕は絶対に戦いたくないもんね!!
「じゃあ、今から言う条件をのんでくれたら、先着三名に、SSSランクの武器を用意してあげよう!」
「な…なんだってぇええ!?」
ほんとうのSSSランクがうまれるかどうかは分かんないけど、ティスが帰らされるよりかは何倍もマシ。
団長の後ろのやつらも、目をまんまるにして僕を見る。
「……お前。我らをだますつもりではないだろうな」
「だます?僕がそんなことするとでも?」
僕がだますわけない。
だから、純粋無垢な目でおっさんを見つめた。
さすがに信じてくれたのか、あごに手を当てて背を向ける。
「……………ちょっと考えさせてくれ」
「いいとも、たくさん悩みたまえ!」
団長たちは輪をつくってなにやらこそこそ話し始めた。
これで、ティスに手を出すことはなくなるだろう。
と、ティスが「あんたバカ!?」と耳元で叫んだ。
キーン、とヘンな音がする。
「み、耳元で叫ぶのやめてよ!!あとバカじゃない!」
「バカじゃないの!!あんたSSSランクの武器がどれだけすごい価値か知ってるの!?お金にすれば金銀貨が何枚も手に入るし、それにA+の冒険者でもなかなか手に入れられないようなものなのよ!」
そ、そうなのか…。
ポカポカと、ティスが僕の胸板を軽く殴る。
思ったより痛い!!
「で、でも、言ってしまったものは仕方ないし。引いてもらうのは最高の手段かと…」
「ばーかばーか!!どうしてわたしのためにそこまでするのよっ!」
それを聞いて、僕はティスのコブシを止める。
そんなの決まってる。
「ティスが、僕の仲間だからさ!」
「……っ」
ティスが息をのむ。
「正直ティスがいなければ、今頃餓死してたかもしんないし、川の位置すらも分からなかった。僕は今までティスを助けたことなんてなかったし…それに、仲間が仲間を救うのは当然だろ?」
にっ、と笑って見せる。
ティスはぱちぱちと目を瞬いて―眉を下げて、微笑んだ。
と、団長が「ティスの仲間よ」とつぶやいていた。
決まったか。
「…SSSランクの武器は、我ら天使族には貴重なもの。そんなものを、我らがもらっていいのか?」
重苦しい声で団長が言う。
僕は笑って言った。
「もちろんですよ。…ただし、条件をのんでくれればね」
僕は条件を言った。
一つ!もうティスをバカにしないこと。
二つ!無理に里に帰らせないこと。
ついでに、ティスは僕の仲間だということ教えた。
とまあこれだけだ。
団長は、「本当にこんなのでいいのか?」と疑っていたが、僕はうなずいた。
これ以上、僕が求めるものはなにもない。
正直こいつらを少しばかり痛い目に逢わせたかったけど、僕が戦えないんだから仕方ないのだ。
団長は条件をのんでくれた。
団長が、ゆっくりとティスに近寄る。
「な、なによ」
少し警戒するように、ティスは僕の後ろに隠れた。
「…ティス。お前は、我ら天使族の落ちこぼれ…役立たずだった。だが、新しい居場所を見つけたようだな。今までバカにしてすまなかった」
団長が頭を下げる。後ろにいた天使族も、あわてて頭を下げていた。
その光景を見て、なぜか誇らしく思った。
ティスは、ふふんと鼻息を出していたけれど。ティスらしい…。
そこで許してやるティスもすごいけど。僕は土下座させるかなぁ…。
「…そういや、誰が武器をもらうか決めたのか?」
「「「…あ」」」
天使族が声を合わせ、互いに見つめあった。
♢♢♢
「じゃーんけんぽん!」
「あーいこーでしょ!」
「あーいこーでしょ!!」
「あーいこーでしょ!!!」
「あーいこーでしょ!!!!」
「あぁいこぉでしょおおおおお!!!!」
…ダメだ。永遠に続く気がする。
天使族のじゃんけんを見ながら、僕はウンザリした。
ちなみにこの世界にはじゃんけんというものがないらしく、僕が教えてやった。
「みんな気が合うのよ。わたしが里にいたころも、こういう決め事は全然決まらなかったわ」
ティスがあきれたように言う。
と、団長が大人げないことを言い出した。
「ここは団長のわたしがもらうべきだ!」
「あっ、団長ずるいですよっ。わたしも副団長ですし、武器をもらいたいです!」
「俺だって副団長だしぃ!正々堂々、じゃんけん?というもので決めようじゃないですか!」
……もう別れてじゃんけんしたら?
「団長のグルーバという」
「副団長のハーツだ!」
「同じく、副団長のフルールですっ」
―結局、この三人に決まった。
この三人で激しく口論になったからだ。
それはもう激しかった。怖かった。
そして、他の天使族たちが潔く諦めてくれた。いつか武器を与えてやろう…。
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