仲間(?)が増えた


「あの…SSSってなに?」

「えぇえ!?まさか知らないでその剣を持ち歩いているの!?」


ティスはあきれながらも、説明してくれた。


SSSとは!

物などの価値のことらしい。SSSは一番高い価値だという。


この剣…そんなに高い価値があるのか。

ただ、タネを植えただけなんだけどな…。


ティスが「よく見せて」というので、剣を差し出した。

「うわ、重っ!…ふむふむ、持ち手が金でできてるのね。重いわけだわ…切れ味は……って、イタッ」

ぶつぶつ言いながら、剣の先に触れる。

うわー、僕と同じことしてる。

剣の先をつついて、人差し指の先に血が膨れ上がっていた。

ティスはあわててその血をなめると、剣を返してくれた。

「す、すごい剣ね、これ!街で売れば、きっと金銀貨10枚はいくわよ」

「きんぎん…?」

聞いたことのない名前だ。

今度も、ティスがあきれながら教えてくれた。


金銀貨とは!

硬貨の中で一番高い金額の硬貨らしい。

いろいろ推測するに、日本円で100000円くらいかな。


…え、ちょっと待て。

この剣、売れば金銀貨10枚はいくって言っていたな。

つまり、売ったら日本円で1000000ゲットできるってことか!?

SSSって聞いたときはあまりしっくりこなかったけど、1000000ゲットできると考えたらすごい価値だと改めて知る。

ティスが言った。


「これ、ドワーフの技術を上回ってるわよ!どこで手に入れたの!?」

「え、えーっとぅ…」


タネを植えたら育ちましたなんて言えないな…。


こんなキラキラな瞳で言われたらなおさらだ。

「えっと…タ、タネを植えて…」

僕は剣を抱きかかえながら、いやいや説明した。

言葉を足せば足すほど、ティスのミケンにシワが寄っていく。

「かくかくしかじか…みたいな感じで…」

「…はぁ、あなた、わたしをバカにしてるの?さすがにそんな冗談通用しないわよ?」

冗談じゃないのに!!

ほんとうなのに!!

「伝わらないならもういいよ…」

と、そのとき。


ぐううぅぅう~


「…あ」

僕の腹の虫が立派に鳴る。思わず顔を赤くした。

そうだった。川を探してる途中だった!

と、ティスが噴き出す。

「あははっ、あなたお腹空いたの?」

「う…空いてるけど、今は川を探してて」

「川?それなら、知ってるわよ。ついてきなさい」

「え?あ、ああ」

ティスが急に立ち上がり、スタスタと歩き始めたので見失わないようにあわてて追いかける。

さすがに早すぎるので、「もうちょっと遅くして」とお願いしたら「仕方ないわね」と言ってゆっくりなペースにしてくれた。

意外と優しい…。


「…そういえば、マシロって性別ないの?」

「え?僕、男だけど…」

「え?」

「…?」


な、なんかすっごくびっくりされてるけど…。

まさか、ティス、僕のこと女だと思ってたのか!?

「ウ、ウソよね?」

「ウソじゃないです…」

「あんた、そんな可愛い顔して男なの?女になったほうがいいわよ」

「そこまでして!?」

じろじろと、僕の頭からつま先までじっくり観察したティス。


「…やっぱり信じられないわ。ちょっと触らせなさい!」

「どこを!?」


全力阻止した結果、結局、触られたのは胸板だけだった。



「ここが川よ」

「わぁ…!」


み…水だーーーーっ!!


ティスに案内された先にあったのは、さらさらと水が流れる小さな川。

現代の川とあまり変わらない。川の周りには、小さくてころころした石が転がっている。

「こ、これ、飲めるの?」

「ええ。悪い成分はないはずだけど」

まじでか!やった!

さっそく川に手をつける。うわ、冷たっ。

そっと手にすくって、口につける。


お、おいしいっ!


久しぶりの水!うますぎるっ!

決してお腹の減りは満たされないけど、水があるだけありがたい。

必死になって水を飲んでいると、ティスが隣にしゃがんだ。

「ほー、いい飲みっぷりねぇ。さっきのお腹の音、すごかったけど?」

ニヤニヤしながらそう言われ、ぼっと耳を赤くした。

「し、仕方ないだろ…もう二日間も何も食べてないんだし」

「あら、そうなの?」

「そうなんだよ…だから、剣持ってウロウロしてたのに、食べられそうな獣が全然いないし」

「へぇ~…」

「狩りはまた今度行くよ。それに、川の場所は分かったし、あとは帰るだけ…って」


…そういえば、帰り道ってどっちだっけ…?



さああ、と蒼白になる。

「あっちだっけ…?いや、こっちだった気も…」

うろうろとあたりをうろついていると、ティスがため息をついた。

「まさか、帰り道が分かんなくなったんじゃないでしょうね?」

「う。…正解です…」

図星。


「はあ…ほんっとバカ。仕方ないわね、わたし優しいから、家まで送ってあげる」


自分で優しいって言ってる…。これ、つい一日くらい前に誰か言ってたな。

まあいいや。

でも、家まで送ってくれるのは助かる。

ほんとうは、紙とかあれば地図を書けるんだけど…なさそうなんだよな。


でも、ティスがいればまたたどり着けそうな気がする。



♢♢♢



「ここがあんたの家?ずいぶんとちっちゃいのね」


「いや…それ小屋だけど」


ティスが小屋を四方八方から眺める。

ティスは天使族なので、空を飛べるらしい。当たり前か。

上空から、家(小屋だけどな)を探してもらった。

川と小屋は近いような近くないような…ハッキリ言ってしまえば、遠かった。

まあ、今は帰れたことを喜ぶとしよう。

いつか、小屋の近くに水路をひきたいものだ。

小屋に剣をしまおうとしたら、ティスもついてきた。

出てきた言葉は、「きたなっ」だったけど、農具に感心しているみたいだ。

「そういえば、ティスはどこに住んでるんだ?」

話題を変えるように、聞いてみる。

ティスは近くのシャベルを手に取りながら言った。

「わたし?わたしは山のふもとの里に住んでるの。天使族が何人か一緒になって住んでるのよ」

「へぇ~…つまり、仲間がいるってこと?」

「まあ、そんなところね。…でも、わたしみたいな落ちこぼれには見向きもしないわ」

ずーんとティスが落ち込んでしまった。

「そ、そっか…」

また暗い話になってしまった…!

えーとえーと、なんか別の話題っ…。

と、視界に入ってきたのはあのタネが入った巾着袋。

そうだ、これだ!!


「ほ、ほら!これがタネ。イメージしたものがなんでも育つタネなんだ!」


「は?……ほんとだ、説明書きみたいなのがあるわね」

巾着を見せると、ティスはまじまじと説明書きを読み込んでいた。

「なによこれ。胡散臭いわね、本当にこんなのでSSS級の剣ができたとでもいうの?はっ、笑わせてくれるわね」

「…じゃあ、実際にやってやるよ」

ムキになって、僕はタネを一粒取り出した。

「ほーぅ。じゃあ、やってみなさい。…ちなみに、イメージしたらなんでも育つのよね?」

「た、たぶん」

「じゃあ、立派な家を育てましょう!」

「い、家!?なんで!?」

「だって、こんな小屋じゃちっちゃいし…狭いもの」

「え?…え?」


「わたし、ここに住むことにしたの。いいわよね?」


す…え、す?すむ…?

頭が混乱してついていかないうちに、さらにティスは言った。

「里に戻ってもみんなから落ちこぼれだって言われるだけだし。ここ、すっごく居心地がいいもの!かくまうつもりで、ね?」

お願い!と手を合わされたので、さすがに断りづらかった。

それに、里に帰っても「落ちこぼれだ」だなんて言われるのはかわいそうすぎる。


…ので、仕方なく許可した。


家は、まあ、なんとかなる…だ、ろう。

正直まだ混乱している。会って数時間なのに一緒に住むとか…どうなんだ?


―まあ、なにはともあれ、第二の人生初の仲間(?)が増えたのだった。

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