第22話 トモキアのプライベート

リラは俺に隠れ、独自に行動していた。


これは、リラ視点の話である・・・。


--- リラ視点 ---


私はトモキアのスケジュールをジェイクに教えるため、アイドルとなって潜入していた。


しかし、トモキアは用心深い人物。


自分の私生活のことやスケジュールを一切話さない。


普通にアイドル業をこなしているだけでは、トモキアのスケジュールは一向に明かされない。


はてさてどうしたものか・・・。


ジェイクも考えあぐねている様子。


ここは私が一肌脱ぐしかないな。


トモキアを誘惑し、デートに誘い出すほかあるまい。


ハニートラップというやつだな。


ジェイクはわたしを心配して「そんな危険なことはさせられない」とか言うだろう。


だから、ジェイクには黙って決行する。


ちょうど今日はミュージックビデオの撮影会。


トモキアも顔を出すそうだ。


当然、ジェイクもマネージャーとして来ている。


ジェイクはトモキアの顔を見るなり、「あいつを早く殺してえ!」と考えている。


仕事熱心なやつだ。そこがまた愛おしい。


さて、ひとしきりミュージックビデオの撮影も終わり、休憩中のことだ。


わたしはトモキアのもとへ向かった。


わたしはわざと少しだけ胸元をはだけさせる。


「トモキアさーん!

 今日もお疲れ様でーす!

 あのう、お仕事のアドバイスをしてほしくって!」


「おお、リラちゃん。

 なんだい?

 言ってごらん?」


トモキアの目線はわたしの胸元にある。


鼻息が荒いぞ、このブタじじい!


まったく汚らわしいことこの上ないが、ここは我慢だ。


「ここじゃちょっといいにくい内容なんで、プライベートで会えませんか?」


「うーん、プライベートはねえ。

 あまり人と会わないたちなんだよ。

 ごめんね?」


やはり、犯罪を犯しているやつは警戒心が高いな。


こいつの今の頭の中は性欲と理性でぐちゃぐちゃだ。


誘惑が足りないか。


私は胸を両腕でわざと寄せた。


「何でもするんで!会ってください!」


さあ、どう出る?


「ぐふっぐふふふ。

 何でも?

 じゃあさ、エッチなこととか?

 って、冗談冗談!」


でた、セクハラおやじのしっぽ!


「やだ、恥ずかしい!

 でも、エ、エッチなことでもいいですよ?

 良かったら、この前のコマーシャルのスポンサーさんも交えて!」


わたしは渾身のぶりっ子をしてみせた。


こいつの頭の中は性欲でいっぱいだ。


「よし!わかった!

 スポンサー様には少し粗相をしてしまってお詫びもしたかったところだ。

 でも、このことは内密にな!

 でなきゃ、きみのアイドルデビューも水の泡にするからね。」


なんて汚い男だ。


黒いテレビ業界を渡り歩いてきただけはあるな・・・。


「も、もちろんバラすようなことはしませんよ!」


「では、明日の13時。

 バターバックスのチェスナット店で落ち合おうではないか。

 よいかね?」


「はい、楽しみにしています!」


よし。


これでいい。


わたしの色香を使えば、トモキアをおびき出すなど簡単な話だった。


これでジェイクに褒めてもらえるぞ!


そうして、私はジェイクに報告した。


「なあジェイク。

 トモキアだがな、明日の13時、バターバックスに現れるぞ。」


「なに!急にトモキアの居場所がわかるとは、どういう風の吹き回しだ!?」


「ああ。私が誘った。ハニートラップだな。」


「なんて危険なことを!

 襲われでもしたらどうするつもりだ!」


「大丈夫さ、あんなジジイ相手。

 わたしは格闘術も心得ているからな、襲われても問題ない。」


「ならいいが・・・。」


「心配してくれたのだな。

 ありがとう、ジェイク。」


「ま、まあな。当然だ。

 お前はパートナーなんだから。」


ジェイクめ、可愛いところあるじゃないか。


トモキアにわたしの谷間を見せたことは伏せておこう。


ジェイクは絶対やきもちを焼いてしまうだろうからな。


---


翌日12時45分、バターバックス前。


トモキアとの待ち合わせ15分前だ。


トモキアはまだいない。


なお、わたしとジェイクは同行していることがバレないよう、ずっと離れて行動している。


トモキアを拷問していいタイミングになったら、わたしが手をあげてジェイクに合図を送る予定だ。


ああ、ジェイクが愛おしい。


こんなに長い間離れ離れなのは久しぶりだ。


すると、ハットにサングラス、マスクをした小太りのジジイが来た。


横にはスポンサーの男だろうか。


「やあ、リラちゃん。

 トモキアだよ。

 ごめんね、こんなわかりにくい恰好で。

 有名人は変装しないといけないよ、リラちゃん。」


「そうですね、わたしも変装してみまーす!」


たしかにそうだな。


わたしは道端で何度も声をかけられ、写真撮影を求められた。


最初はうれしいが、だんだんとうっとおしくなってきたところだった。


「さて、相談があるんだったね。

 さあ、こっちへおいで。」


すると、トモキアとスポンサーはバターバックスではなく別の方角へ進んでいった。


どこへ行くのだろう?


「あ、あのう。

 バターバックスでお茶するんじゃないんですか?」


「ああ。そんな子供が行くようなところへは行きゃあせんよ。

 今から行くのは大人の遊び場さ。」


嫌な予感がする。


「大人の遊び場?」


「ああ。きみはまだ行ったことが無いかね?

 ラ・ブ・ホ・テ・ル・だ・よ♪

 リラちゃんとのエッチ、楽しみだにょーーーん!」


わたしは寒気がした。


このエロジジイ、どこまで脳内お花畑なんだ!


私はとうとう猫を被るのをやめた。


「はあ。貴様のようなデブで汚いおっさんと行くわけがなかろう。

 勘違いも甚だしいな。このクズめ。」


「な、なんてことを言う、リラちゃん!」


すると、トモキアが私の腕を無理やり引っ張ろうとした。


わたしはトモキアのその腕をひっぱたき、ジェイクとの合図の手をあげた。


拷問を頼んだぞ、ジェイク!!!


=== 作者あとがき ===


次回、トモキアを成敗!


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