第10話 生徒会

まず俺たちは、学長バルタザールの悪行の証拠集めに走った。


しかし、金銭の受け取りは当然現金での受け渡しだ。


データとして証拠が残っているわけではない。


となると、金銭の受け渡しを行う現場を録音して差し押さえる必要がある。


というわけで、とりあえず、バルタザールに近付く必要がある。


俺はリラにアドバイスを乞う。


「なあリラ。

 バルタザールに近付くにはどうするべきだと思う?」


「そうだな・・・。

 生徒会に入るのはどうだ?

 生徒会が教師陣と最も近しいのではないか?」


たしかに、大学の重鎮に近付くには生徒会しかないか・・・。


「そうだな。

 生徒会に入ったら何やら余分な事務作業が増えそうだが、学長に近付き、情報を得るにはそれしかあるまい。」


俺たちは大学の生徒会室に足を運んだ。


コンコンっ


「はーい」


ガチャっ


すると、青い髪の男が現れた。


ちょっと俺様っぽいイケメンだ。


「はーい、どちら様?」


「ああ、新入生のジェイクと言います。

 生徒会に入りたくて、伺った次第です。」


すると、青髪の男は驚いた。


「おー、ついに来たよ!

 実はね、うちの生徒会、人手が足りなくてね。

 あー、俺は2年のカッシウス、よろしく。

 生徒会メンバーは、会長のシャーロットと副会長の俺しかいないんだ。」


カッシウスは続ける。


「そうだな、ジェイクには書記をお願いしたい。

 いいかな?」


「ええ、わかりました。」


俺は二つ返事で書記になった。


「早速仕事を一つ頼みたい。

 シャーロット会長を呼んできてほしいんだ。

 たぶん、奥の部屋にいるから。

 俺はちょっと今手を離せなくてね。」


カッシウスは何やら段ボールをがさごそしている、忙しそうだ。


会ったこともない会長をなぜ俺に探させるのか・・・。


まあ、先輩の頼みだ、仕方ない。


さて、俺は奥の部屋に入る。


ん?


なんだこの部屋、ソファにテーブルにテレビ。


シェアハウスの共有スペースのような部屋だ。


見渡すが誰もいない。


すると、さらに奥の部屋から物音がする。


俺はそこの扉を開いた。


ガチャっ


「えっ?」


そこにはバスタオル1枚の金髪の女性が!


「きゃーーーーー!」


カッシウスが慌てて駆け寄る。


「何事だ!」


「いや、けして覗きに入ったわけではないんです!

 まさか、バスタオル1枚の女性がいるなんて思わず・・・。」


「しまった、会長のシャワータイムだったか。

 しかしジェイク、扉を開ける前にノックくらいしような?」


「す、すみません・・・。」


なお、鼻の下を伸ばした俺の頭をリラが叩いたことは、言うまでもない。


バシっ!


---


金髪の女性、シャーロット会長は着替えを終え、俺たちの前に現れた。


「コホン、先ほどは驚かせてしまいすみません。

 生徒会室にはシャワーがついてるのよ。

 でも、ノックはしましょうね。

 私はここの生徒会の会長、4年のシャーロットです。

 あなたが書記のジェイク君ですね。

 で、そちらの女性は?」


シャーロットがリラに目を向けるので、リラが答える。


「わたしはリラ。

 こいつのパートナーだな。」


「あらまあ、パートナー!

 もうご結婚なさって?」


シャーロットは勘違いしたので、俺は訂正した。


「いやいや、そういう意味でなく。

 うーん・・・相棒といった感じでしょうかね。」


「うふふ、そういうことですの。

 リラさんは生徒会に入らないんですか?」


「ああ、わたしはここの学生ではないからな。」


「あらあら、ここはほんとは関係者以外立ち入り禁止なのですが・・・。

 まあ、ジェイクさんのパートナーでしたら仕方ありませんわね、おほほほ。」


なんてゆるい生徒会なんだ・・・。


シャーロットは続ける。


「さて、新たなメンバーを迎えたということで、簡単ではありますが、私たちで歓迎会を開きましょう!

 さあ、カッシウス、お菓子とジュースを持ってきてちょうだい。」


「はい、会長!」


カッシウスはすぐに歓迎会の準備に取り掛かった。


「しかし、助かりましたわ。

 うちの大学の学生、生徒会の仕事をめんどくさがって、なかなか生徒会をやってくれないの。

 猫の手でも借りたいくらいだから、リラさんも手伝ってもらえるとありがたいわ。」


リラは猫の手招きをしてふざけている。


その手招きで新メンバーが加入してくれたらいいな。


すると、ドタドタドタ!!!


生徒会室に向かって足音がする。


「すみませーーーーん!」


茶髪のショートヘアの美少女が生徒会の入り口に慌ただしくやってきた。


「まだ生徒会メンバー、募集していますか!?」


シャーロットが答える。


「ええ、庶務しか空いていないけれど、庶務で良ければぜひお願いしたいわ!

 今日は2人も新メンバーが来てくれるなんて、なんておめでたい日なんでしょう!

 私は会長のシャーロット、よろしくね!

 カッシウス!この子の分のお菓子もねー!」


「わ、私は1年のリリアです!

 よ、よろしくお願いします!

 わー、生徒会に入るの、夢だったんですー!」


リリアはルンルンである。


なんと可愛らしい、愛嬌のある子なのだろうか。


と考えていると、リラがやきもちを焼き、俺の脇腹にエルボーをかましてきた。


「ぐっふ!!!」


リラのやきもちも可愛いのだが、この暴力癖をなんとかしてくれ・・・。


すると、カッシウスが準備を終えた様子。


「さあ、歓迎会の準備ができたぞ!」


すごい。


お菓子はマカロンやチョコ菓子。


ティーカップに紅茶が注がれる。


なんとおしゃれなティータイムか。


俺たちはしばらく談笑した。


そして、歓迎会も終盤。


カッシウスは酔いつぶれ、シャーロットはベロベロだった。


業務中になに酒飲んでんだよ・・・とは思いつつ、未成年のため飲酒をしなかった俺とリリアが介抱する。


リラはいまだにうまいうまいと酒を飲んでいる。


「あははは、みなさん、はしゃいじゃってお酒飲みすぎですよー。

 ところで、ジェイクさんはなぜ生徒会に入ったんですか?」


リリアに質問された。


何と答えよう・・・。


俺は適当に答えた。


「いやあ、俺にはなにか熱中できるスポーツとか趣味が無くてね。

 生徒会なら頑張れるかなって思って入ったんだ。」


すると、シャーロットがむくっと起き上がり、口を開く。


「ジェイクは私のことが好きだから入ったんですよね?

 私のお風呂のぞきに来たくらいなんですものー。」


酒くさっ!


会長、酔っぱらっているな。


「ちゅっ」


え?


会長は俺にキスした。


しかも口に。


「ちゅっ」


そしてリリアにも。


「ちゅっ」


そしてそしてリラにも。


リリアは赤面している。


リラははてな顔。


「このキスは友好の証のキスです!

 私の母国ではそういう習わしなのですよ。」


俺はあっけにとられ、初キスの感触を思い出す。


急に近づく会長の顔、ふわっと香る会長の香り。


唇と唇が触れた瞬間に全身に走る、電撃のような感覚。


友好のキスとはいえ、初めてのキスはなんと甘美な味だったんだ・・・。


と考えていると、またしてもリラのエルボーが俺の脇腹に。


そんなにやきもち焼くなら、エッチくらいさせてくれよお、と思った。


リラを見るとフンっ!といった感じだ。


まあ、そんなこんなで生徒会の歓迎会は幕を閉じた。



=== 作者あとがき ===


次回、会長の恥ずかしい姿!


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