第6話 シュガー拷問

俺は例のザギン街の高級クラブ前にいた。


シュガーの顔は既に写真で分かっている。


そいつがこの高級クラブに顔を見せれば、すぐに拷問部屋を発動する手はずだ。


「寒いなあ、リラ。」


隣にはリラがいる。


春の夜だ、まだまだ寒い。


「いや、私は神だからな。

 寒さなど感じない。

 わたしは温かいから、わたしに触れているといい。」


リラがそう言うので、俺はリラにそっと触れた。


リラの柔肌は人間の温かさだった。


本当に神なのか?と疑いたくなるような柔肌だった。


「お前いま、わたしが神かどうか疑ったな?

 まったく疑り深いやつだな。」


俺はリラのこぶしで頭をぐりぐりされた。


そうこうしていると、派手な一団がやってきた。


リラが口を開く。


「あの中にシュガーがいるかもしれないな。」


俺は集団の中心にいる男に目を凝らす。


シュガーだ!


俺はその一瞬に「拷問はじめ!」と心で念じた。


すると、拷問部屋が開けた。


やつは今現在悪事を働いているわけではない。


しかし、遺族が悲しんでいる中、高級クラブに行ってしまっている自分は超悪いやつ、という自覚がこいつには常にある。


その悪意に、拷問部屋は反応したのだ。


---


気が付くと俺は拷問部屋にいた。


そして、隣にはリラがいる。


「リラもこの部屋にはいれるんだな。」


「ああ。お前とわたしは運命共同体だ。

 いつまでも一緒さ。」


え、それって告白!?


「まあある意味告白だな。」


そうこうしていると、シュガーが目を開ける。


「ん?どこだ?

 って、なんで手足に枷(かせ)がついているんだ!?」


「お前がシュガーで間違いないな?」


「そうだが?

 おい、俺を誰だと思っている、これを外さんか!」


シュガーは手足の鎖を外そうともがいている。


「それは無理な相談だな。」


すると、シュガーはリラの存在に気付くと眼の色を変えた。


「なんだ、そのべっぴんな姉ちゃんは!

 もしかして、ここのクラブはそういうプレイなのかい?」


このクズエロジジイめ・・・。


リラはイラっとした顔つきで言う。


「おいジェイク。

 この汚らしい豚のいやらしい視線が不愉快だ。

 まずは目を潰せ。」


さすが神、ぶっそうなことを平然と言ってのける。


「はいよ、リラ。」


「ちょ、ちょっと待て。

 目を潰すって、本気じゃあないよな?

 な?そうだろ?」


シュガーがおどおどし始める。


俺は目玉くりぬき器を手に取る。


この器具はスプーンみたいなものだ。


これで目玉をくりぬく。


正直、これは得意ではない。


グロすぎて吐き気がする。


「リラ、やっぱ、ふつうにナイフで刺すだけにするよ。

 俺、これ苦手なんだ。」


「ふん、お前もまだまだ、人間なのだな。」


当たり前だろ、俺は人間だ。


俺は、シュガーに何の説明もなしにいきなりナイフで右目を刺した。


「ぶぎゃあああああああああ!!!

 な、何が起こっている!?

 こ、これは現実か!?」


眼から血が飛び出る。


「ああ、現実だ。

 お前の右目はもう治らない。

 俺はな、お前がひき殺した遺族の代弁者だ。

 遺族はお前を殺したくて殺したくて仕方ないだろうな。」


「ま、まってくれ。

 いまやってる裁判も負けで言い。

 謝るから、謝るからあああああ!!!」


シュガーは泣きじゃくる。


自分の立場が危うくなるとすぐ手の平を返す。


なんて哀れな生き物だ・・・。


「誠心誠意謝ってみろ!」


「すいませんでしたあああああ!!!」


シュガーは泣きながら土下座する。


床が涙と鼻水と血液でぐしゃぐしゃだ。


ブッブーーーー!!!


部屋が赤く光る。


「ウソだな。

 お前は、心の中では謝っていない。」


俺はやつの髪の毛をグイっと掴み、表を向けさせる。


そして、ナイフで左目を一突き。


「ぎゃああああああああ!!!

 俺の目がーーーーー!!!

 なんで!?

 謝ったじゃないかああああ!!!」


「謝罪とはな、許してもらうためにするのではない。

 罪を悔い改め、相手にそれを誓う行為なのだ。

 貴様のそれは謝罪とは呼ばん!」


「ヒューヒュー!」


リラが横槍を入れる。


「く、くそう。

 俺様にこんなことして、警察が黙ってねえぞ!?」


「ふん、この部屋は完全殺人が可能なんだよ。

 助けは期待するな。」


「く・・・。

 俺が助かる道はねえのか?」


「ないな。

 強いて言えば、俺の質問にすべて正直に答えたら楽に殺してやる。」


「なんて理不尽な・・・。」


「ふっ。

 お前が殺した子供の遺族だってそう思っているさ。

 これでおあいこじゃないか?」


俺は続ける。


「さて、質問タイムだ。

 お前はなぜ親子をひき殺した?

 正直に言えよ。」


「そりゃあ、たまたまなんだ。

 本当に気付かなかった。

 本当だ。」


ブザーはならない。本当らしいな。


「ではなぜ、ひき殺したあとすぐに出頭しなかった?」


「に、逃げ切れると思ったんだ。

 監視カメラにも映っていないし・・・。」


「最後だ。

 なぜ、裁判で無罪を主張した!

 なぜ素直に遺族に謝らない!」


「そ、そりゃあ。」


言葉に詰まるシュガー。


俺はムチを床に打ち付け催促する。


バチンっ!!!


「ひいいいい!

 弁護士先生に相談したらよお、まだ無罪の可能性はあるから粘ろうって言われたんだ。」


俺はムチでシュガーの顔面を叩く。


バチンっ!!!


「ここまできて他人の、弁護士のせいにするのか!

 わが身大事でお前が決めたことだろう!」


「うぎゃああああ!!!

 そうです、そうです、その通りですうううう!!!」


ふん、すべて正直に吐いたようだな。


「では、一瞬で終わらせてやる。

 首と胴を同時にギロチンする。

 お前がひき殺した子供も上半身と下半身がバラバラだったらしい。

 お前が殺したのと同じように殺す。

 いいな。」


「ま、まってくれ!

 何でもする!

 金なら全部やる!

 それで手打ちにできんか?」


「ばかめ、貴様の罪は貴様の死によってしか償うことはできん。」


俺はシュガーを断頭台に固定した。


「最後に言い残すことはないか?」


「・・・。」


シュガーは何か言いたげだ。


「どうした?最後だ。

 何か言ったらどうだ?」


シュガーは口を開いた。


「この悪党ども!

 お前らは間違いなく地獄行きだ!

 さっさとくたばっちまえ!!!」


シュガーの精一杯の捨て台詞だった。


「ああ、残念だ。

 せっかく首も切断して楽に殺してやろうと思ったのに・・・。

 切断するのは胴だけにするよ。」


俺は断頭台の綱を放した。


ガゴンッ!!!


シュガーの胴体はスパッと真っ二つになった。


「うがあああああ!!!!

 う・・・うぎゃああああああ!!!!」


切断の直後、シュガーはまだ意識がある。


感じるのは絶望的な痛みと目の前に迫る死の恐怖のみ。


シュガーは少しの間のたうち回り、絶命した。


そして、リラが口を開いた。


「ふん、随分と手慣れたものだな。

 さすがに10年弱もこの能力を使っているだけはある。

 それにジェイク。

 いつになく生き生きとしておったぞ。」


「まあな。これは俺の天職みたいなものだ。

 感謝しているんだぜ、リラには。」


「そうか、忠実なる我がしもべよ。

 今後ともがんばってくれ。」


こうして、俺はトニーからの任務を終えた。



<<作者あとがき>>


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