第7話 任務報告

シュガーは死んだ。


死体は高級クラブ前に打ち捨てられた。


現場は一時騒然。


すぐに警察官が来て調査を始めるも、証拠などない。


監視カメラの位置もすべて調査済み。


俺たちが映り込む余地などない。


さて、俺たちはすぐにトニーのところへ戻っていた。


「やあ、お二人さん、お疲れ様。」


トニーはコーヒーを差し出してくれた。


「言われた通り、シュガーは始末したぞ。」


「うん、確かに始末したみたいだね。

 情報はすでに入っているよ。」


さっき殺したばかりというのに、どういう情報筋なんだろう・・・。


トニーは続ける。


「実はね、僕が君たちを監視していたんだ。

 気付かなかったろ?

 僕、一応プロなんでね。」


俺とリラは小声で話す。


「(おいリラ。神なら尾行くらい気付けるんじゃないのか?)」


「(わたしは全知全能ではない。あまり過信しないでくれ。)」


「(そういう大事な話はもっと早くしろ!)」


「(うるさいなあ。気が乗れば話すさ。)」


リラのやつ、まだいろいろ隠しているな?


すると、トニーが咳払いをして話を戻す。


「コホン、話を続けてもいいかな?

 でね、ちょっと聞きたいんだけど、君、どうやって殺しを行ったのかな?

 僕には、あの派手な集団の中でシュガーだけが一瞬で真っ二つにされたように見えたんだが・・・。」


やばい、俺の能力を馬鹿正直に説明しては、頭のおかしな奴だと思われる・・・。


それに、こんなこと知られて信じられでもしたら化け物扱いされて殺されるかもしれない。


俺のチカラを上手く隠し通す必要がある。


「それは企業秘密ってことにはできないか?」


「まあ、言いたくないならそれでもいいよ。

 ただその場合、信用度は落ちるから、合同任務は難しくなるけどね。

 大物を殺したいならどうしても合同任務でなきゃならない。」


なるほどな、一緒に任務をこなす仲間が信用に足らなければいけないのは当然か・・・。


「大物を殺すためにここに来たんです!

 やらせてください!」


「でもねえ、能力が明かせないんなら・・・。

 まあ、数多くの任務をこなして、信頼を勝ち取ることだね。

 それしか道はないだろう。」


道があるならまだ良かった・・・。


俺はほっと胸をなでおろす。


しかし、大物狩りのために数多くの小物狩りをこなすのは少々遠回りになってしまったな。


まあ仕方ないか・・・。


トニーは続ける。


「それで・・・、お隣のリラさんはいったいどういったご関係で?」


うーん、リラは殺しに関して特に何もしていないなあ。


でもアドバイスはくれるし、殺しのパートナー・・・ってことになるのかな?


俺が返答に悩んでいると、リラが代わりに答えた。


「愛人兼殺しのパートナーだ。」


ええええーーー!!!


愛人!?


どういうこと!?


この前、「神を抱く覚悟」とか言ってエッチさせてくれなかったのに!?


俺は小声で問いただす。


「(お、おい!どういうことだ!)」


「ふん。ほとんど愛人ではないか。

 この前だって、わたしのたわわな胸を揉んだではないか?」


「(ばか!声が大きい!)」


「む、む、む、胸を揉んだーーー!?」


トニーが取り乱す。


「コホン、2人がそういう関係なのはわかった。

 まあ、任務を2人でこなすのも良いだろう。」


なんか納得されちゃったよ。


「ただな、任務に色恋は持ち出すなよ。

 それが命取りになりかねんからな。」


「ああ、わかっている。」


「よし、報告は以上だな。

 で、ヴェスパーに会わせたいんだが、あいにく今日はヴェスパーは出掛けている。

 申し訳ないが、明日の午前にまたここに来てくれ。」


「了解、トニーさん。」


そうして、俺はヴェスパー事務所を後にし、自室に戻った。


---


例のごとく、リラはシャワーを浴び、俺のベッドに入る。


そう言えば、俺はベッドをシングルサイズからセミダブルサイズにした。


シングルに2人で寝るのはさすがに寝にくくて翌日に支障をきたすのだ。


かといって、ダブルサイズにすると、寝るときにリラとの距離ができてしまう。


セミダブルであれば、ちょっと手が触れ合ったりできるのだ。


「しかし、なぜダブルにしなかった?

 どうせ買い替えるならばダブルのが良かろう?」


俺は、リラに心を読まれないよう、リラと触れ合って寝たい、という本音を考えないようにした。


考えちゃだめだ、考えちゃだめだ、考えちゃだめだーーー!!!


「なにを考えちゃダメなんだ?

 言ってみろ? どうせすぐバレるぞ。」


『リラと触れ合って寝たいからセミダブルにしました』とか考えるなー!


あっ、考えてしまった。


リラはニッと笑う。


「ほう? そんなに私に触れていたいか?

 かわいいやつだな。

 まるで盛りの付いた犬ではないか?」


「もてあそぶのもいい加減にしてくれ!

 こちとら童貞の18歳だぞ!」


ふん。もてあそぶだけもてあそんでエッチはお預けだろ?


「ふん。まあ時が満ちれば、私のすべてをやらんこともない。」


え?そうなの?


時が満ちるってなんだーーーー!?


「それはまだ答えられんな。

 もう寝る。」


こうして、モヤモヤしながら俺もシャワーを浴び、眠りにつくのであった。



<<作者あとがき>>


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