第3話 神

俺は転校してからと言うもの、学校での殺しは一切行わなかった。


転校は面倒だし、こりごりだったからだ。


俺が番長を殺したのではないかと、家族は少し疑っているのだろうか。

ぶっそうなことはやめなさいと母から口酸っぱく言われたのもある。


だが、校外では何度も殺しを繰り返した。


このチカラを授かった時のお告げ「正義の鉄槌を」という言葉と、好きな子からの感謝の言葉が俺を突き動かしていたのだ。


具体的には、俺の住む町から遠く離れた町の強盗犯、万引き犯、重い交通違反者の殺しといった具合だ。


これらは、罪の重さに限らず全員殺した。


なぜなら、拷問部屋からの生き残りがいては、俺の能力が世間にバレてしまいかねないからだ。


俺のこれらの活動は、世間では「正義の連続殺人犯」として取り上げられつつあった。


警察も動いているようだが、俺のチカラは目には見えない。


足がつくことはないだろう。


---


そして、転校から8年後・・・。


俺は大学に行くこととなった。


実家暮らしでは親の目もあり、あまり派手に正義の鉄槌を下すことができないからだ。


さて、晴れて一人暮らしだ。


今なら何でもできる気さえする。


だが、一人暮らしになったことだし、女の一人でもできねえもんかなあ。


無論、俺は童貞だ。


彼女の一人や二人、コホン、一人くらいほしいものだ・・・。


と思っていたら、俺のアパートの部屋の呼び鈴が鳴った。


ピンポーン


誰だ、今は夜だぞ?


のぞき穴からのぞくと、白い長髪に色白の肌の美女が立っているではないか。


白い上品そうな服を着ている。


ついに俺にも春が来ちゃったり!?


と期待に胸を膨らませつつ、俺はドアを開けた。


「はーい、何の御用で?」


「ああ、やっと会えたな。」


やっと会えた?


どういうことだ?


ストーカー?


いや、こんな美女がストーカーなわけないか。


「はて、僕の知り合いか何かでしたかね?」


「まあな。

 わたしは神だ。」


ん? 聞き間違いじゃないよな??


「えっと、かみ(髪)?

 床屋さんか何か?」


「いいや。神様だ。」


えーーーーーー!?


神様ってこんな美女だったの?


てか俺、神様に発情してたんだが!?


「ああ、発情しておったな。

 この殺人童貞大学生!」


な!


心の声が読めるのか!?


しかも、俺が殺人したことも、童貞であることも筒抜けではないか!


「ああ。わたしはお前をずっと見ておったぞ。

 だからわかるのだ。」


「ずっと見ていただと!?

 ははは。

 天界とかから見てたのか。」


「ああ、よく知っているな。そう、天界だ。

 そして、お前が10歳の時、その能力を貸し与えたのもわたしだ。

 覚えているかな?」


うろ覚えではあるが、あの時の声は確かに今聞こえているこいつの声と合致している気もするな・・・。


「ああ、なんとなく覚えている。

 神様の言う通り、人類に正義の鉄槌を下し続けているぞ。」


「わたしはリラだ。リラと呼べ。」


リラは続ける。


「ああ、お前は忠実なるわたしのしもべだ。

 その仕事を随分と楽しそうに全うしておったな。

 だが、軽犯罪者ばかりだな。

 小物を狩ったところでキリがない。

 もっと大物を狙わねばな?」


たしかに、今までは親の目もあり、あまり活動できなかった。


だが、これからは違うぞ!


「ああ、お前の考えは知っている。

 これから大物を狩るのだろう?

 そこでだ。

 活動を本格化するに際して、私からアドバイスをしようと思ってな。」


「アドバイス? なんだ?」


「殺し屋ヴェスパーを訪ねろ。

 そこで大物の悪人を殺す依頼がある。

 やつに仕事をあっせんしてもらうんだ。」


殺し屋ヴェスパー? 聞いたことないな。


「そいつ、どこにいるんだ?」


「ああ、このアパートの2階だ。」


なにーーーー!?


「運命とは面白いものだな。

 たまたま同じアパートに引っ越すとはな。

 はははは。」


リラは初めて笑った。


「アパートの2階は事務所になっているだろう?

 そこが殺し屋の事務所なんだ。

 当然、表向きは違う会社を名乗っているがな。」


「では、早速向かうのか?」


「いや、もう遅い、明日にでも行こう。

 それより、わたしは少し疲れた。シャワー、借りるぞ?」


え? 神って疲れるの? 神ってシャワー浴びるの?


俺はいろいろとツッコミたいところだったが、美女が俺の部屋でシャワーを浴びるのだ、野暮なことは言いはしない。


リラが脱衣所で服を脱ぐ音が聞こえる。


ごくり・・・。


シャーーー


シャワーの音がする。


俺はもう一度生唾を飲む。


ごくり・・・。


---


リラがシャワーから戻ってきた。


「ふう、シャワーはいいな。

 気持ちよかったぞ。」


「そ、そうか。そりゃよかった。」


俺の発情している心を読んでいるのか、リラはニヤッとしている。


「そうだ、今夜から私はここに住むぞ。

 よろしく頼む。」


えーーーー!?


「で、でも、部屋の契約の時に、ここは1人しか住んじゃダメって・・・。」


「かまわんだろう?

 神を数える単位は『人』ではないからな。」


まあ、たしかにそうか・・・。


「それよりも、ベッドが小さいぞ、シングルサイズではないか。

 せめてセミダブルのものを用意しておけ。」


って、一緒にベッドで寝る気かよ!


「わ、わかったよ。」


美女が同じベッドで寝ると言ってくれている、野暮なことは言うまい。


そうして、リラは俺のベッドに入る。


続いて俺も入る。


・・・・・・・・・。


続く沈黙。


リラは眠ったのだろうか?


「リラ、お、起きているか?」


「ああ。」


そもそも、神って眠るの?


いや、今はそんなことはどうでもいい。


今は、リラのおっぱいを揉むかどうかを考えるのだ。


しかし、この思考はすでに読まれている。


それでもなお、何も言ってこないということは、OKということか・・・?


・・・・・・よし、OKなんだな?


俺は恐る恐るリラの身体に腕を沿わせる。


そして、リラのおっぱいを揉んだ!


もみもみ・・・。


すると、リラが突然沈黙を破った。


「神を抱く覚悟がお前にはあるのか?」


その質問にビクッとした。


なにか鬼気迫るものを感じたのだ。


神を抱く覚悟か。


抱いたらなにかやばいことが起きるのか?


俺は嫌な予感がしたので、そっと手を引いた・・・。



<<作者あとがき>>


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