序章 視点:最も健全な殺人鬼達

ダンジョン。それは、国にとって資源であり、災害であり、軍隊校だ。

ダンジョンの手で、人間は限界をはるかに超え、覚醒する。国はある一定のラインを超えた者を「天理者てんりしゃ」といい、彼らをを怒らせないよう、敵に回さないよう、できれば有効的になってくれるよう、管理している。大抵はその環境に甘んじて鳴りを潜める。だが、稀に国に牙を向いてやろう、一矢報いてやろうというものが天理者になってしまうことがある。そのような反政府派武闘集団を「最も健全な殺人鬼ヘルスキラー」という。

そして彼らは現在、「南西田川座中級土迷宮みなみにしだがわざちゅうきゅうどめいきゅう」へ来ていた。


「ったく、、、ここは南なんか西なんか、川なんか田んぼなんかはっきりしろや!!」


「いや、それはどーだっていいだろ、、大事なのはここは中級迷宮ちゅうきゅうめいきゅうなんかじゃ全くねえってところだ。」


迷宮、つまりダンジョンは現在時点で、初級、中級、上級、特級、超級、天級、神級の7種に分けられている。ダンジョンでは現在までに合計6種の層が観測されているが、天級まではそのまま、初級はに下層までが、中級には中層までが、上級には上層までが、特級には深層までが、超級には深淵までが、そして天級には奈落までがあるダンジョンということだ。


だが、神級は違う。


ダンジョンには絶対のエネルギー量が存在する。ダンジョン壁や素材からわかるエネルギー量からそのダンジョンの強さ、攻略難度、そして階層の深さ等がわかる。そして神級迷宮はエネルギーの限界値が。神級迷宮には上限層が観測されていないのだ。つまりダンジョンにはが存在する。その前人未到の地を有する神級ダンジョンは、世界各地に現れた数多のダンジョンの中のたった3つでしかない。

そのうち1つは世界最大のダンジョン大国、アメリカ合衆国。また1つはダンジョン始まりの国と言われるレブラドルニア魔宮国。そして1つは極東の技術大国、日本だ。




下層、中層、上層、深層、深淵、奈落。その全てを制覇するものに未開の地は開かれるとされている。が、実際のところ、現時点でそんな頭のおかしい才能は見つかっていない。


「それもって話だろ?要は俺等が達成すりゃあいいんだ。簡単なこった」


「そうも行かねえのが現実ってのさ。」


「それは俺等”最も健全な殺人鬼ヘルスキラー”にも当てはまるのか?」


「どうだか。だが実際、ニッポンのクレイジーガール、なんて言ったっけ?朱爪あかつめ 命音めいねとかいうやつ。あいつは深淵1層止まりだそうだ。」


「そいつはニッポンのトップなのか?」


「少なくとも我々の知る中では」


「じゃあ、その程度の国ってわけだ。やっぱ技術大国ってだけあって武力にはもっぱら疎いってか?ww」


「油断するなよ?」


「そっちこそ」


そうして男達は暗闇に紛れた。

あとに残ったのはただ、静かなダンジョンの空気だけ。

何もなかったかのように静かな夜が戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る