TS不良少年を人間扱いしてくれたのは、”アイツ”だけでした

温泉いるか

第1話 変わり果てちまった俺

(まえがき)


今回は本作を手に取っていただきありがとうございます。

この物語は近未来の現実世界を舞台とした、性転換がメインテーマの学園モノとなっております。


とある社会で、冤罪により性転換刑罰を受けた不良少年が自分の生き方を見つける、そんなお話……


序盤は少々シリアスな展開が続きますが、前向きで優しい気持ちになれる物語を目指して書いていくので、どうかよろしくお願いします。


なお、メインヒロイン(男だけどヒロイン!)の登場は第二話となります。どうぞよろしく……

********************************************














性別変更手術。


それは文字通り、人間の性別を変えてしまう手術。


その技術は人々が理想の自分を手に入れるために進歩し、今や性転換者たちは当たり前に社会に浸透している。


この社会で、男は理想の女になれるようになったし、女は理想の男になれるようになった。


だけど科学の進歩ってのは良いことばっかじゃなくて、この社会ではもう、外見で人の性別を見分けることができなくなってしまった。


隣に座っている髪の長い人が男なのか女なのかも、俺にはもう、わからない。この技術はきっと、性別という概念そのものを捻じ曲げてしまったのだ。


憧れの男性俳優の中身は学生時代にこじらせていた腐女子かもしれないし、職場でタイトスカートを履きこなす同僚のOLも内面では男の性欲を滾らせ、獣を秘めているかもしれない。


君の初恋のあの娘ももしかすると、青臭い少年時代を過ごしていたかも。


それらの秘密を知ろうとするのは、タブー。人の秘密は不可侵領域。


人々は皆社会の中でお互いの”本当の性別”について疑いあって、その疑念を口には出せずに靄を抱え込みながら生きている。



そしてこれは、そんな世界の因果に巻き込まれてしまった、きっとまともには生きていけない"俺"の話。





















クリニックの待合室で、手首をつねりながらじっと俯き、彼は考えていた。恐怖をまぎらわそうとするたびに断片的な情報のカケラが脳内にいくつも浮かびあがっては、すぐに消えていく。


──三丁目の家にいる犬はかわいい。隣町の公園にある大きいすべり台がすき。でも、俺は学校に友達がいない。


まともな思考ができない、病的な脳内だった。楽しいことを考えようとしてもすぐに嫌なことを思い出して、吐き気に襲われる。


心臓が手首で激しく脈を打ち、身体が小刻みに震えていた。


自分の名前は、いつ呼ばれてしまうのか。


静かな待合室で、表情だけは男らしく、怖くないふりをしようと虚勢を張っていたが、根源的な恐怖は隠しきれずにびくびくと座っていた。


『柚月さん』耳がきんと鳴る。


『柚月さん、来てください』


ついに呼ばれてしまったのは、自分の名前。


室内に響いたアナウンスの音を鼓膜で反芻すると、腹いっぱいに痛みが広がる。そして背筋を180度に伸ばしながら、彼はぎこちなく立ち上がった。


バインダーを持ったナースの案内で、手術室に通される。


彼の名前は柚月ゆづき弥隼みはや。今から、女になるための手術をする、だ。




手術室にはつんとする薬の匂いが染みたベッドと、見たことの無い形をした金属製の器具が並んでいる。弥隼みはやは水浅葱の手術着に着替えさせられると、手首に全身麻酔用の管を注入された。


この部屋にいる医者も、冷たく光る金属製の器具もすべて、俺を女に変えてしまうために用意されたもの。そう思うと胸の奥がまた痛んだ。


実はこの手術は、弥隼が望んで選択したものではないのだ。


弥隼は騙され、嵌められ、そして無理矢理この道を選ばされた。その結果この望まない手術を受けなければいけないことになってしまった。そしてこれから一生、女性という性別と向き合って生きていく。


***


──どうして俺は、こんなことになっちまったんだろう。


すべてはきっと、あの時から手遅れだったんだろう。そう、リサと出会ったあの時から。


リサと俺は、恋人の一歩手前だった。


リサはいつも穏やかで、俺みたいな一匹狼を優しく受け入れてくれて、俺の意固地な一面とかも否定せずに、受け入れてくれた。


当時の俺はリサのことが本気で好きだった。彼女の放つ暖かい光が、血の気の多い俺の孤独を埋めてくれるかのようだった。


俺にとってリサは、完璧な女の子だった。


リサが俺に向けた愛がすべて、偽物だったということに目を瞑れば。


ある梅雨の日のこと。リサはデート中に突然豹変し、腕を引いて「トイレの中ならわたしのおっぱい触っていいよ」と囁いてきたのだ。


この時点で何かおかしい、と感じて引き返すのが正解だったってのはわかってる。実際、ちょっとは怪しいかもって懸念が頭によぎった。


でもこの状況を100回繰り返したとして、俺は100回同じ過ちを繰り返すと思う。そのくらい、当時の俺は彼女に酔っていたんだ。今だからわかるけど、寂しかったんだと思う。その証拠に彼女を失った今の俺は、すごく寂しい気がする。


結局、馬鹿な俺は誘惑に乗せられ、リサと一緒に多目的トイレに入ってしまった。


しかし、お察しの通り俺は最初から騙されていたのだ。あの温かい眼差しも、俺を認めてくれた言葉も、すべて仕組まれた罠だった。


早い話が、美人局つつもたせだった。


トイレに入った瞬間、リサは突然「助けて!」と叫び、俺から離れ、持っていた携帯で警察に通報した。俺は最初何が起こっているのかわからず、ただ狼狽えていた。いや、本当は状況を理解するだけのピースは揃っていたんだけど、それを受け入れたくなくて脳が自分の機能を制限したんだ。そういう感覚だった。


まだ信じたい、という気持ちが思考の邪魔をしてしまったんだ。


その結果、俺はリサの近くから離れられなかった。きっと彼女はおかしくなってしまったんだ、俺が見守って、助けてやらないと、なんて思ってたんだ。


ただ、警察がやって来たころには『俺がリサを犯すためにトイレに連れ込んだ』ということになっていた。その頃になってようやく現実を受け入れ始めたよ。



この美人局の目的は、金銭を要求することではなく、俺への復讐だということが後になってわかった。どうやらリサという女は隣町の不良である、佐々木の指示を受けていたらしい。俺は過去、いろいろあって佐々木に恨みを買っていたのだ。


そしてそれがすべてのきっかけだった。最初リサが近づいてきた時から、全ての歯車は俺を貶めるために動いていたのだ。そしてこの事件がきっかけで俺は、性転換手術を受けることになる。


というのも、こういう性被害の事件が起こると、社会は再犯防止のため『性転換刑』を執行するのだ。


性転換刑。

それは文字通り、性転換手術を強制的に受けさせる刑罰。


こういう動きは今じゃ珍しくない。俺は中学二年生だから少年事件として扱われたけど、それでも充分に危険性があるとみなされ、性転換手術を受けさせられることになってしまった。


でも、俺は悪くない。いや、多目的トイレを使ったのはちょっと悪いと思ってるけど、でも最初に俺を誘惑したのはリサのほうだ。

でも、それをいくら主張しても、大人は全く信じてくれなかった。無理もない。俺は挑発に弱くてすぐ右手が出ちゃうから、元々問題児として見られていたんだ。


だから両親にも愛想を尽かされ、中学の担任にも呆れられてしまった。

結局、判決が覆ることはなく、俺は性転換手術の同意書にサインをすることになってしまったんだ。


***


「それでは、施術を開始します」



冷酷に響く医師の声で、弥隼は現実に引き戻された。


静脈に繋がった管から、麻酔が注入されていく。


がんばって強がってたけど、ほんとはずっと手術がこわかった。


手術をすると、弥隼の体は完全に女性としての機能を持たされてしまうのだ。


股間のアレを切り取られちゃうだけじゃなくて、下腹部をかっさばいて女性として子供を産むための人工器官を移植されたり、骨格や声帯を削られて、完全に女性らしく変えられてしまうのだ。


まるで、自分が自分じゃなくなってしまうみたいにぜんぶなくなってしまう。男としての体も、力も。……小学校にいた数少ない友達にも、もう合わせる顔がない。


それに、もし手術が失敗して、おなかがズタズタになったら?


仮に手術が成功したとして、学校に戻ったら一体どんな目で見られるのだろう?


こわいよ……こわい……


おれ、なにもわるくないのに。どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。


その心の叫びはすべて手遅れで、手首に繋がった管から麻酔が注入されていく。この終わりのない沈んだ想像が、麻酔によってかき消されていく。吸い込まれるような眠気に包まれながら、弥隼の意識は海の底に沈んでいった。







数時間後、麻酔で遮断されていた意識が徐々に浮かび上がると、弥隼が最初に感じたのは下腹部に広がる鈍痛だった。


「……ん、んぅ?」


ベッドの上でもがくように体をくねらせながら、徐々に意識を取り戻していく。そして、部屋に充満するドクダミのような匂いと手首に繋がれたままの点滴の管を確認して、段々と“現実”を思い出してゆく。


ここは病院、俺は……手術を受けたんだ。その事実を思い出すと同時に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。


(……そうだ。ちんちんは……!?)


現実を少しずつ受け入れてきた弥隼は、覚悟を決めながら患者着の股間に手を伸ばした。


……ない。そこに触れるべき感触が、ない。


あるべきものが存在しないことを知らせる指の腹が、下着の向こう側の”行き止まり”にぴたりと触れる。その瞬間、感じたことのないぞわっとした寒気が指先から全身に広がった。


「あ……あ……」


わかってはいたけど、まさかほんとうになくなってしまうなんて。


(このお腹の中も……もう、俺、子供を産めるようになっちゃったのか……?)


深いため息をついた瞬間耳に届いたのは、甲高くて、やわらかい声色。それを聞くと、またひとつ切なくなる。


(そうか……声まで……)


弥隼は自分の身体の変化を嫌というほど体感して、頭の中がぐちゃぐちゃになったように錯乱していた。

俺の声も、身体も、股間も、もう俺じゃなくなっちゃったんだ。


***


その後、一日の経過観察と医師によるカウンセリングを受け、弥隼は周りの目をびくびく気にしながら帰宅した。


自宅のリビングの扉を開くと、母さんがソファに座って雑誌に目をやりながら「手術はちゃんと終わった?」と聞いてきた。心配のかけらもない呑気な声色だった。


「う、うん……」


「まったく、テキトーに生きてるからこういう目に遭うのよ。反省なさい」


「なんだって!俺は何もやってないって何回も言ったじゃないか!」


母さんは呆れたように目を細め、「それ、まだ言ってるの?ほんとうに子供なんだから」と言った。殴りかかってやろうかと思ったが、体も心も限界で、何かをする気力が残ってなかった。何に対しても興味を持てなくなった俺はそのまま自室に戻ってベッドの上に転がり、すてばちになった。



母さんには、何を言っても話が通じない。弥隼のことをうっすら見下していて、最近では弥隼への興味を尽かし、代わりに4歳下の弟である朔矢さくやを兄みたいにならないようにと、大事に育てている。


ただ、弥隼は弟を妬んだりはしない。朔矢はまだ小学五年生なのに自分なんかよりもずっと賢いし、母さんよりもずっと賢い。そのうえ愛嬌もあるから、自分みたいなできそこないの兄よりもずっと立派に育つだろう、と弥隼は思っている。

それに、あいつは結構かわいいとこもあるから。


でも、今はちょっと朔矢とは話したくない。

朔矢は何も悪くないけど、弥隼はもう頼れるお兄ちゃんではないのだ。

弟の失望する顔を見るのが、怖い。


おやすみ。


***

術後の最初の月曜日は、ちょうど停学明けの日だった。


先日送付された女子用の制服を床に広げると、目まいがしそうになった。


(これ、マジで着るのか……)


ワイシャツの胸元につけるのは、深い紅色のリボン。半月板ほどまでの丈のスカートに、紺色のブレザー。落ち着いた色の布の組み合わせが折り重なり、女性らしさのアイコンを纏う制服。


弥隼は恐る恐るその制服の裾に手を伸ばし、通してゆく。ひとつ、またひとつワイシャツのボタンを留めていくたびに冷や汗が首筋を滑り落ちていく。


ゆったりとしたワイシャツの感触が、手首に纏わりつく。

やがてすべてのボタンを留め終わると、弥隼はチェック柄のスカートを掴む。


はじめてのスカート。男の俺が、スカート。

今まで決して履いてはいけないと思っていたそれに、ゆっくり足を通す。


ゴムがウエストをゆったりと圧迫し、その下からふわりと曲線的な布が、弥隼の足を包み込んでゆく。


鏡を見ると、髪の短い少女が自信なさげに立っていた。男の時とはまるで印象が違うシルエット。顔立ちは変わらないけれど、骨格や体格も……胸も女性らしく、華奢に変えられてしまったので、意外と違和感がない。短髪が男っぽい印象をまだ残しているけれど、それでもそこにいたのは少年ではなく、確かに少女だった。


この制服姿で学校に行けば、一体クラスメイトにどう思われるのだろうか。


学校に行かない選択肢だってある。今は中二の秋。学校をサボってずっと高校受験の勉強をして、それなりに偏差値の高い公立高校にでも行けば、弥隼の性別のことを知らない仲間ができるかもしれない。でも、本当に独学で受験勉強なんてできるのか?弥隼はもともと、学校の成績もたいして良くない。停学中も自堕落な生活を送っていたのに、果たして不登校で良い高校に受かる事なんて可能なのか。答えはノーだった。


それに、もしかすれば今の弥隼の身体のことを受け入れてくれて、気の置けない友人になってくれるやつが、教室のどこかにいるかもしれない。


ちょっとだけ、がんばってみよう。そう決めた。


***


気付いたら弥隼は、学校についていた。通学路での記憶がまるでないけど、確かに今、教室の前に立って、重たい扉に手をかけていた。


そして扉が完全に開き、教室と外をふさぐ壁がなくなると、恐怖、嫌悪感、焦りといった負の感情が一気に去来した。学生らしい活気に満ちた教室の中で、自分だけが別の座標にいるのだ。俺が開けたドアの音を聞いて、クラスメイトたちが好奇の目線を俺に向ける。


こわい。やっぱり学校なんて、来なければよかったかも。


弥隼は手の震えを押さえながら椅子を引き、自分の席に座った。



『あれってもしかして……』

『やっぱそういうことだよね……マジか……』


女子になった自分を囲むクラスのざわめいた空気が、耳を突き刺すようだった。変わり果てた自分の姿を見て、どのように思われているのか想像するだけで、吐き気がしてくる。そして自分がそんなふうに萎縮していること自体までもが男らしくなくて、情けなくなってしまう。


『元々あいつやばかったもんね?友達もいないみたいだし……』

『シッ!聞こえてるよ……』


耐えろ。ここで屈したら未来はないんだ……




「お前、もしかして柚月かよっ?」

弥隼が座席にちんまりと座っていると、クラスメイトの木村が話しかけてきた。


「……そうだが、どうかしたかよ……」

「どうした、じゃねーよ!ははっ!お前、まさか本当に手術させられたのかよ!」


「…………」弥隼はいじけた顔で、何も乗っていない机の上を見つめる。板上で並行に走る木目には、小さな亀裂が走っていた。


「何黙ってんだよ~っお前、北中きたちゅうのオンナ襲って手術刑になったんだろ?噂が流れてたぞ」

「そ、それは違う!俺は騙されたんだ!全部冤罪なんだ!」


弥隼がそう言うと木村は鼻で笑ったような顔をし、「何言ってるか知らんが、裁判で決まったんだからごねても仕方ないだろ」と、弥隼の手のひらを握ってきた。


彼の油っこい手が、弥隼の手を包み、柔らかさを確認するかのように揉んでくる。それはまるでおもちゃの人形を扱うかのような、気味の悪い手つきだった。


「な、なにするんだ……っ」

「なにって、触ってるだけだが?それにしてもあの意地っ張りな柚月くんが、こんなに華奢になっちゃうなんてねぇ」


自分が弱い生き物だとみなされていることに対する嫌悪感や、気味の悪い木村の仕草に対する恐怖が脳の中に浸透していく。


「気持ち悪いから、マジでやめろ……」

木村の手を振り払おうと左右に振ろうとするが、まるで粘土のかたまりに手をつっこんでいるかのように鈍重で、うまく振りほどけない。


「お前、もしかしてそれ、抵抗してんのか?そういえば、手術で筋肉の力も弱められてるんだっけか?かーわい」


せめてもの抵抗を見せようともう片方の手で木村を殴ろうとするが、あっさり受け止められてしまう。木村の手首にふにゅんと沈み込む俺の手の柔らかさが、自分の非力さをより一層実感させる。


「あはは。マッサージされてるみたいだ」

「く、くそっ……」

「ま、弱くても仕方ないよ。だって女の子だもんな」


そして木村はあざ笑うかのように弥隼の手を放し、「ま、せいぜいがんばれよ、柚月」と言い残して、冷えた視線を送りながら去っていった。


性転換刑では、再犯のリスクを防ぐために筋力を低下させる注射が投与されることになっているのだ。だから今の弥隼は、平均的な女性以下の力しか出すことができない。


脂肪に満ちた非力な手のひらを、ぎゅっと握った。


もともと、喧嘩の強さだけが取り柄だったような人間なのに。手術のせいでなにもかもなくなってしまった。肉体だけじゃなくて、誇りも、社会的な立場も、すべて奪われてしまった。


ふっくらとふくらんでいる胸の中は、からっぽで満たされていた。


木村との仲は、以前から険悪なものだった。いや、そもそもこのクラスには友達と呼べる人間がいなかった。弥隼は意固地で喧嘩っ早い性格で、自分を曲げることも苦手なのでクラスメイトからははぐれ者として扱われていた。


クラスメイトは、二種類に分けることができた。一種類は、クラスになじめない弥隼をいじろうとちょっかいをかけてくる、木村のような生徒。これがだいたいクラスの二割を占めている。


そして残った八割は、喧嘩っ早い弥隼のことを怖がって、近づこうとしない人間。


さっきも隣の席の水戸という女子が落としたペンを拾ってあげたが、彼女は弥隼の差し出したペンをひったくるようにとって、礼も言わずに震えていた。たとえ力が弱くなって殴り合いの喧嘩ができなくなっても、怖がられているのは変わらないようだ。むしろ女性としての社会的立場を得ようとしているみたいで余計に恐れられているかもしれない。


べつに、弥隼は自分のことを怖がるやつが悪いと思っているわけではない。ただ、居場所のないこの世界の中でうっすら孤独を感じているのも確かだった。


そんなわけで、このクラスには弥隼とまともに会話しようとする人間はいなかった。


……ただ一人だけ、「例外」を除いて。


弥隼はその「例外」のことをこの時は対して気に留めていなくて、それどころか心の奥底で煙たがってもいた。でも確かにこのクラスで、会話をするために弥隼に話しかけてくれるのはそいつだけだった。


「こらっ!柚月の席に座っちゃダメだぞ!」


弥隼の後ろ姿を見て素っ頓狂な声をあげる少年の髪が、風で揺れていた。

************************************************

(あとがき)

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。


今はまだ悲観することしかできない主人公だけど、誰も知らない弥隼の弱い一面も強い一面もかわいい一面も、たくさんあるんです。それは弥隼自身も気付いてないもの。もし彼のこれからを応援してくたくなったら、次のページをめくってくれるとうれしいです。


ヒロイン(?)の登場は次回。


あとは、よかったらブックマークと評価をくれたら……とってもよろこびます。

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