漢詩 九
日高睡足猶慵起
小閣重衾不怕寒
遺愛寺鐘欹枕聴
香炉峰雪撥簾看
匡盧便是逃名地
司馬仍為送老官
心泰身寧是帰處
故郷何独在長安
書き下し文:
日高く睡り足りて猶ほ起くるに慵し
小閣に衾を重ねて寒を怕れず
遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き
香炉峰の雪は簾を撥げて看る
匡盧は便ち是れ名を逃るるの地
司馬は仍ほ老いを送るの官たり
心泰く身寧きは是れ帰る處
故郷何ぞ独り長安にのみ在らんや
解説:
慵 ヨウ ものうい おこたる:
小閣:小さい二階建て程度の家の事
衾 ふすま:
怕 ハ ハク おそれる:
欹 イ・キ ああ・そばだてる・かたむける
撥 ハツ・ハチ・バチ
はねる・かかげる・のぞく・おさめる:
紗:複数の動詞を一字で表している
簾 レン す すだれ:
匡盧 キョウロ:
廬山の異称。
周の時代に仙人の匡俗が隠れ住んだ事に由来する
便 ベン・ビン
たより よすが・いばり・へつらう・すなわち:
仍 ジョウ・ニョウ
よる・かさなる・しきりに・なお:
寧 ネイ 外デイ・ニョウ
外やすい・ねんごろ・むしろ・なんぞ・いずくんぞ:
現代語訳:
日は高くよく眠れたが、起きるのが面倒だ
小さな家に襖(ふすま)を重ねて、
寒さを気にする事は無い
遺愛寺の鐘を枕を耳にしながら聴く
簾を上げて香炉と峰の雪を見る
廬山は名を隠す場所として知られる
司馬はやはり老官を送るのに相応しいし、
心は晴れ、身は収めやすい場所だ
故郷が何故長安一つと言えるのか
考察
小:廬山の側に住む人物の詩だろうか。
長安だけでは無く、廬山も安住の地である、
と言う事を伝えたいらしい。
(二).
贈陳商 李賀
長安有男児
二十心已朽
楞伽堆案前
楚辞繋肘後
人生有窮拙
日暮聊飲酒
祗今道已塞
何必須白首
書き下し文:
陳商に贈る
長安に男児有り
二十にして心已に朽ちたり
楞伽案前に堆く
楚辞肘後に繋る
人生窮拙有り
日暮聊か酒を飲む
祗だ今道已に塞る
何ぞ必ずしも白首を 須たん
解説:
已 シ すでニ:
であっていたと思われる
楞伽 リョウガ:
インドの山の名前。 仏典の名前でもあるらしい。
堆 タイ 外ツイ
外うずたかい:
熟語:堆積
案 つくえ:
楚辞 ソジ:
中国戦国時代の楚地方の詩集。
祗 シ つつしむ・ただ:
須 ス 外シュ
常用外まつ・もちいる・
もとめる・すべからく…べし・
しばらく
現代語訳:
長安に男児がいる
二十にして心はすでに朽ちている
机に楞伽経が高く積まれ
楚辞は肘の周りに多く置かれる
人生にはもどかしい時があり
日が暮れて少しの酒を飲む
ただ、今道がすでに無くなり
何故白髪になるのを待つのか
紗:学問する書生を表した
詩だろうか。
学問をし続け、ただ老いて行くだけの
生に疑義を呈する、と言った意味合いだろうか。
個人的には
「好きにすればいい」
と思うが。
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