漢詩.(伍)

王翰『涼州詞』


葡萄美酒夜光杯


欲飲琵琶馬上催


酔臥沙場君莫笑


古来征戦幾人回


書き下し文:


葡萄の美酒夜光の杯


飲まんと欲すれば琵琶馬上に催す


酔うて沙場に臥す君笑ふこと莫れ


古来征戦幾人か回る


解説:


催す サイ もよおす:


莫 バク なかれ:


ボとも読んだ気もするが...


既に記憶が八界へと消え去りかけているのかも知れない。


無い、とほぼ同義だと思われる


暮れや夕暮れのような意味もある様だ


回る: 返る、帰るの意もあるらしい


現代語訳:


葡萄の美酒の杯が夜に光る


馬上で琵琶を弾きながらそれを飲もうとする


酔って浜に倒れ込むが、笑う事は無いだろう


古くから、戦場に行って帰ってきた人が


何人いるのか


(三).


張継『楓橋夜泊』


月落烏啼霜満天


江楓漁火対愁眠


姑蘇城外寒山寺


夜半鐘声到客船


書き下し文:


月落ち烏啼いて霜天に満つ


江楓漁火愁眠に対す


姑蘇城外の寒山寺


夜半の鐘声客船に到る


解説:


現代語訳:


月が落ち鳥が鳴き霜が天に満つる


川の楓と漁火が眠気に抗う


姑蘇城外の寒山寺から


夜半の客船に鐘の音が聞こえて来る


(四).


陸游『遊山西村』


莫笑農家臘酒渾


豊年留客足鶏豚


山重水複疑無路


柳暗花明又一村


簫鼓追随春社近


衣冠簡朴古風存


従今若許閑乗月


拄杖無時夜叩門


書き下し文


笑う莫れ農家の臘酒の渾れるを


豊年客を留めて鶏豚足る


山重なり水複なりて路無きかと疑ふ


柳暗く花明らかに又一村


簫鼓追随して春社近し


衣冠簡朴にして古風存す


今従り若し閑かに月に乗ずることを許さば


杖を拄いて時と無く夜門を叩かん


解説:


渾 コン まじる にごる まざりあう


すべて こぼれる? ふるう?:


渾渾と言う使い方もする様だ


簫 ショウ:


笛等の楽器だったと思われる


閑 カン ひま いとま


のどか しずか」


例:


「閑静な住宅」


拄 チュ チュウ シュウ


杖の事の様だ。 木製の。


現代語訳:


農家が臘酒を振舞うが笑う事は無い


豊作の年に客を留め鶏と豚を出す


山、水重なり道が無いかと疑い


柳暗く花は明るくまた村が。


簫鼓が聞こえて春の社が近く


衣冠簡朴にして、古風でもある


この時に従い静かに月に乗る事が


許されるならば


拄杖が何度も夜の門を叩く

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