漢詩.(肆)

白居易(白楽天)『長恨歌』(抄)


九重城闕煙塵生


千乗万騎西南行


翠華揺揺行復止


西出都門百余里


六軍不発無奈何


宛転蛾眉馬前死


花鈿委地無人収


翠翹金雀玉搔頭


君王掩面救不得


迴看血涙相和流


書き下し文:


九重の城闕煙塵生じ


千乗万騎西南に行く


翠華揺揺として行きて復た止まり


西のかた都門を出づること百余里


六軍発せず奈何ともする無く


宛転たる蛾眉馬前に死す


花鈿は地に委てられて人の収むる無し


翠翹金雀玉搔頭


君王面を掩うて救ひ得ず


迴り看れば血涙相和して流る


不明、難読漢字


抄 ビョウ うつす:


紗:で、合っていたと思われる


闕 ケツ:城門の脇の物見櫓


乗: 車の単位


奈何 いかん: 如何に、と同義だと思われる


花鈿 カサイ:金の飾り


翠翹 スイギョウ:翡翠の髪飾り


翠華 スイカ:天子の旗


カワセミの羽で作られた事に由来する様だ


掩 エン おおう:


現代語訳:


九重の城闕の煙が塵を生ずる


千の車と万騎が西南に行く


天子の旗が揺揺と行き交い


都の門から西に出て百余里


六軍はどうしても行軍せず


宛は転び、蛾眉馬は先で死ぬ


花鈿、翡翠の髪飾り、金雀玉は


地に落ちるが拾う者はいない


頭をかきむしる


君王は顔を覆うが救いを得ず


その様子を廻って覗えば、


血と涙が合わさって流れ落ちる


考察:


紗:よく情景が分からない。


書いた人間の状況を合わせて


理解できる詩文だと思われる


意は


「軍隊がどこかの場所に行軍し、


 きらびやかな物が落ちたりしているが、


 軍は進む事無く、その様子を見ていた天子が


 血の涙を流している」


と言った所だろうか。


この文章読むだけでは正直


あまり理解しがたい所がある。


(二).


杜牧 『清明』


清明時節雨紛紛


路上行人欲断魂


借問酒家何処有


牧童遙指杏花村


書き下し文:


清明の時節 雨紛紛


路上の行人 魂を断たんと欲す


借問す 酒家は何れの処にか有る


牧童 遙かに指す 杏花の村


解説:


遙 はるか ヨウ: 


旧字


現代語訳:


清く、明るい季節に雨がパラパラと降る


道を歩く人は魂を断とうとしている


酒場はどこにあるかと尋ねると


牧童が杏子の花が咲く村を指し示す

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