第5話ヒロ

僕が初めてA型施設で働いていた時の友達に、ヒロと言う20代の男がいた。障害は心臓病。愛想の悪い男だったが、トマトジュースが大好きで女の事しか興味のないようなヤツだった。

背は低くて、パチンコ屋に行くと店員から身分証を見せろと言われていた。

コイツは楽しいヤツで、お酒は飲めないがお好み焼きやファミレスで食事を何度かした。

僕は32歳から34歳までその施設で働き転職した。


すると、ある晩に電話が掛かってきた。

「ヒロが倒れた」

と。

ヒロも一般就労していて、会社で倒れたそうだ。しかし、意識を取り戻すとパニック状態になり病院を抜け出したらしい。

誰もが分かるくらいに左胸が大きく見えるペースメーカーを入れていた。

しばらくは、それで元気に過ごしていた。

だが、元気は長続きしなかった。

仕事の休み時間に電話があった。

「ヒロが亡くなった」と。

通夜に行ったが、穏やかに寝ているようだった。

泣き崩れる友達もいた。

享年25歳。


お好み焼きを食べなら笑っていた姿を思い出す。

「羽弦さん、羽弦さん」と、言って僕に付いてきた男。

余りにも早い死であった。

君からは、色んな事を学んだよ。不器用でも誠実に生きていたら、皆んなに慕われる事を。

また、お好み焼きを食べたいね。

だが、それは僕が空に飛んでから。待っててくれよ!ヒロ!


安らかに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る