第2話陽子さん(仮名)

僕は38歳の時、肺炎で入院していた。

回復してくると、馬鹿だから病室を抜け出し、外でタバコを吸っていた。

ある朝、車いすの40代らしい女性がちょっとした坂を登ろうとしたが、中々、前に進めない。だから、「どちらまで?」

と、尋ねると、「そこの歩道まで」と言う。

その女性もタバコを吸っていた。

名前は陽子さん(仮名)と言った。

膠原病で1年のうち10ヶ月は入院しているそうだ。

それから、仲良くなりタバコの時はいつも車いすを押して、僕は退院しても陽子さんの病室へ入り、差し入れをしていた。

娘さんがいたが、結婚式には車いすで参加したらしい。

ある日、彼女が外出届けを出したので食べたいと言う寿司屋に連れて行った。

だが、シャリを喉に詰まらせて吐いた。

大事には至らなかったが、もう、食事は無理だろうと思っていた。


ある日、いつもの様にLINEを送ると返信が無い。

心配していた。

しかし、ある日の晩、陽子さんからLINEが届いた。

【こんばんは。陽子の娘です。母は先週の日曜日、亡くなりました。生前は羽弦さんにお世話になりありがとうございました】

と。

僕は悲しんだ。いつかはそう言う日が来ると思っていたのだが。

また、陽子さんとタバコを吸いながら食べたい料理の話しや店の話しをしたい。

さらば、陽子さん。

あなたとのタバコタイムは楽しかった。娘さんは、健康で幸せな結婚生活を楽しんでもらいたい。


安らかに。

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