あなたの声が聴きたい!

羽弦トリス

第1話隣のじいちゃん

僕の実家は九州にあったが、父の死により母は実家を売り、名古屋に来て生活している。

実家に帰ると必ず隣近所や関係者にお土産を配るのが通例だった。

隣に住む親類の家族に挨拶に行くと、喜んで迎える。

特に隣のじいちゃんと呼ばれる人は僕の人生の師匠であった。

魚釣り、植物の育て方、魚の捌き方、野菜の育て方、色々小さい頃から教えてもらった。

だから、今でも枝肉の剥がし方、魚の下処理が出来て、樹木医になれたのだ。

隣じいちゃんは、50代の時仕事の事故で左目を失明した。

だが、軽トラの運転は出来るし、狩りで野獣を仕留めてくる。

キジ、野ウサギ、イノシシ、シカ。

これらの調理は僕は中学生の頃から出来る様になった。

隣のじいちゃんが教えてくれたのだ。

母は出来ないし、父は包丁はきんぴらゴボウの時以外は握らない。


よって僕が下処理して、煮たり焼いたりして食べた。僕の姿を見ているので弟も野獣の処理は上手い。

今から6年前に隣じいちゃんは亡くなった。

84歳だった。最期は肺炎。

毎年、九州に帰る時は隣のじいちゃんと農家の話しや近況の話しをしていた。

それが、帰郷の楽しみでもあった。

僕がオジサンになるのだから、親類はもっと歳を取る。

後10年は大丈夫だと思っていたが、死は突然に現れた。

じいちゃんともう一度、魚釣りや野菜の育て方の話しをしたい。

このエッセイは、僕の記憶のアルバムとして書いて行く。

じいちゃん、お世話になりました。ありがとうございました。

あなたの、技術は今でも生活に生かして、言葉は仕事での金言として活用しています。


安らかに。

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