行動開始
「やぁ」
7月の終わりといえども普通に夏だ、こいつの笑顔は涼やかでいいもんだが実際に気温は下がらない。
鍵をかけいざ出発、バス停まで10分ちょい、ゲーム終わりにちと雑談で4時間過ごした男達に10分は短すぎた。
「バスは涼しくていいな」
学生は休日されと大人は仕事、平日ならばバスもさほど混んでいない適当な席に座りスマホで少々の個人時間。
公共機関で騒ぐヤツほど迷惑なものもない、そうはなりたくないもんだ。
ふと思う、彼女らの自宅は知り得ないがこの時間にあの場所、手段は限られる送迎でもしてもらうのだろうか?
バス停に停まりふと視線が入口に映る。
目を疑いたくなった、マスクにサングラス若い女性が2人。
幸いにもカケルはスマホに集中している、すれ違いざまにサングラスを少し下げ、どうよ! とでも言わんばかりアホなのかこいつらは。
しかし一度冷静に考える、この時間に女子が2人でお出かけ。おかしくはない。
しかも後ろの席に位置取りしているよほどのことが無ければ見ない位置、到着さえすれば合流は容易いだろう。
ひとまず安心、バスが停まりトガクシに連絡。
(お前もう少しなんとかならなかったのか?)
(想定外、故に緊急措置です。なんとかお願い!)
お願いって……何もなければ……
「よぉ!カケル」
視線がドアに吸い付く。
「おおサイトウ、お出かけか?」
「部活の集まりでなー」
挨拶しながら俺の後ろに座る。
この位置は表示にまずい、サイトウと話すたびにあいつらが視界に入る。
今日はどこへなんておばさま達の会話よろしく楽しそうだ。
それにこいつ流れる飯屋の看板見るたび、でかい声出してあそこうまいよなーなんて呑気に話し出す。
位置にも依るが反射的にカケルが看板を見ようとすれば更にバレやすい、普段はこういう時は黙っていればこいつは? なんていう紹介イベントは発生しない。
しかしやらねばならぬときもある。
少し息を吐いて覚悟を決める。
「カケ……」
「俺ここだわ、また人いなかったら頼むわー」
カケルができる限りな、なんて返事したサイトウはいなかった。
台風のような男だった。
台風に台風があたった時は消滅しないのか、リアルでは当てはまらないらしい。
「んで? なんか言おうとしてなかった?」
「いや……飯どうしようかなーって、さっき話してたからさ」
適当にごまかす、正直もうすぐ到着だ、台風の後は静かに晴れ渡るに決まってる。
決まってて欲しい。
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