もう一回、本気で!

 ゲーマーの住処がCS機から離れPCゲーマーが増えたことで、PCが無ければ読書そんな生活になりつつあった。

 そしてそんな本が自由に借りることができる図書館が併設されている時点で学校は意外と悪い存在でもないのかもしれない。

 そんな中でも文芸部は読書家の生徒たちから第二の図書館として呼ばれ、ないものが意外とある場所なんて呼ばれ方もしているようだ。

 現部長トガクシいわく、ここは歴代部員のゴミ箱なんだとか、退部する際に最低1冊寄贈のルールは不用品廃棄の場所に使われているのだろう。

「イチノセが休み初日から部活に来るほど敬虔な読書家だとは」

「開口一番喧嘩を売られるような事してないと思うが」

エアコンがついてるようで初夏といえど誰もいなければ最高の読書スポットの一つでもある。

 借りていた本を棚に戻し、次は何をと探していると独り言のようにトガクシが話し始める。

「私さ、この夏もう一回チャレンジしようと思う」

 本を選びながらそっかと返事をしながら本棚を眺める。

「だからさ、もう一回本気で手伝ってほしい」

 振り返ると読んでいた本は閉じられ、一年前を思い出した。

――

「私、カケルに告白しようと思う」

「そっか」

「なんか対応さみしくない?」

「これまで手伝ってやってようやくってなもんだろ、それに俺はそれを手伝えない」

 結局のところ告白なんてイベントは自己満足が大半だろう。

「振られても責任なんぞ、取れないからな」

「別にイチノセにそこまで求めてないからいいよーだ」

 ……それはそれで少しさみしい。

――

「それで?一度振られてるのにどうやって付き合うんだ?」

 ふぐの様に膨れるトガクシは膨れるだけだった。

「それはイチノセが手伝ってくれるって」

「言ってないだろ」

「じゃあ手伝ってー!」

 叶わない恋に意味はあるのか、恋することに意味があるのか。

「それより今まで聞かなかったんだがイセはそのあたり知ってるのか?」

「うん!フミノちゃんには条件付きで手伝ってもらってるんだー」

「条件?」

 守秘義務ということでと条件は教えてもらえなかった。

「とりあえずフミノちゃんが午後に来てくれるからそこで作戦会議!」

「俺が来なかったらどうしてたんだ?」

「そりゃぁWeb参加ということで連絡を……」

「先にいれろよ」

 ため息を一つ、こいつには計画性というものがない。

「午後ならどっちにしろ一度帰る、昼飯を食わないと行けないしな」

 本は作戦会議終わりに選ぶとして昼食は取らねばならない。

「ちょっと待った!」

 そんなトガクシはカバンからやけに膨れたコンビニ袋を取り出す。

 こちらをどうぞと言わんばかりに惣菜パンが放出される。

「俺の昼食は?」

「This is」

「ちょちょ、どこ行くの」

 両肩を掴まれ、重心が後ろに下がる……頃には遅かった。

「ちょ」

「あ」

 後ろに倒れ込む者、前に倒れるもの。

 男、女。

 この痛みがなければ眼福ではあったかもしれない。

 痛み、絶景どちらも堪能するまでもなくドアの開かれる音。

「おわった」

 そう呟く頃にはドアは閉められ、トガクシは全力で追いかけていた。

 見上げる天井はただ虚無だった。


 

 

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