第20話 真実はただ1つ!


「帰還の魔法陣は、帰還の魔法陣。そのまんまですよ?」


 アントンは、それがどうした。とでも言わんばかりの顔をしてあっさりと答えてくれた。だがしかし、そんなことでは俺には意味不明で理解不能である。


「ここにさぁ、君も任務を全うして帰還の魔法陣で元いた世界にさっさと帰ろう。ってあるんだけど、俺の任務って何?俺ってガリアスの嫁なんだろ?何をすれば任務が全うされるのかな?」


 そう、これ大事。テストに出るよ。ってやつだ。だってそうだろ。勇者は魔王を倒すために召喚されたから、魔王を倒せば任務完了。聖女は瘴気を浄化するために召喚されたから、瘴気を全部浄化すれば任務完了。では、嫁として召喚された俺は何をすれば任務完了なんだろう?それと、帰還の魔法陣ってなんだよ。元の世界に帰れるなんて聞いてないよ。


「あ、ああ、そ、う、ですよ、ねぇ」


 明らかに動揺してます。ってわかりやすいぐらいに分かりやすく、アントンは反応してくれた。


「嫁だったらさぁ、結婚式とかするのかなぁ、って思ってたんだけど、別にドレスの採寸とかそんなこともしないし、花嫁修業もしないし、俺は毎日魔力を貯めるためのことをしているだけみたいなんだけど、それでいいわけ?そもそも男の俺が嫁でいいの?」


 根本的な質問だ。

 男の俺が嫁?

 確かみんなは俺の事って呼ぶけれど、番ってなんの事?確か最初に運命とか、オメガとか呼ばれた気がするンだけど、なんの事だか分からないんだよな。いや、本当はうっすらと気がついてはいるんだよ。でも、そのうっすらとした記憶がエロいこと関係なもんだから、俺は心の奥底で否定し続けているんだ。


「ええっとぉ……」


 アントンは言い淀んだ。明らかにこれ言っちゃっていいのかなぁ?どうなのかなぁ?って、迷いみたいなものを感じる。


「番って何?俺の任務を教えてよ」


 俺はここぞとばかりにアントンに詰め寄った。


「番様の任務は、そのものズバリ、ガリアス王子とつがう事ですね」


 アントンがやけにあっさりと答えた。軽い口調で、事も無げな雰囲気を出して、別に難しいことなんてありませんよ。って、そんな空気感を醸し出してきた。


「つがうって、なんだよ。どうやってつがうわけ?」


 俺が質問をすれば、アントンはちょっと考える素振りを見せて、でも直ぐに答えた。


「番様はオメガでいらっしゃいますから、魔力を貯めて発情すればつがえますよ」

「発情?」


 怪しげなワード来たァ!もはやコレ、エロい漫画が生物の教科書ぐらいでしか見ない言葉だよな。

 発情って、発情って、発情って、思春期男子ならその単語を教科書で見つけたのなら、何度も目で追いかけてしまうに違いない。いや、追いかけるね。なんなら蛍光ペンでマーカーしちゃうね。


「はい。発情です。オメガは魔力が溜まると発情するんです。そうすると、アルファとつがう事がてきます」

「なるほど、つまり俺はガリアスとつがえば任務完了ってことなんだな?そうしたら帰還の魔法陣で元いた世界に帰れる。ってことでいいんだな?」

「かえ……帰る、んですか?」


 アントンは意外っていうか、不思議っていうか、そんな気持ちが現れているような、そんな顔をした。


「え?だって、任務完了したら帰還の魔法陣で帰っていいんだろ?」


 俺が確認するように言うと、アントンは俺の言葉を自分の口の中で繰り返し、首を捻って考え込んだ。


「え、まぁあ、そうですね。発情できるほど魔力が貯まれば、帰還の魔法陣を発動することが出来ますね」


 なんだか斜め上を見たままアントンは答えた。


「帰還の魔法陣ってどんなのか、見せてくれよ」


 俺がそう言うと、アントンは本を開いてパラパラとページをめくった。聞いていたとおり、空白のページがやたらとあって、結構後ろの方に俺の求める帰還の魔法陣が描かれていた。


「こちらを床に描いて、その真ん中に番様が立ち、帰りたいと願えば魔力が反応して魔法が発動します。番様の貯め込んだ魔力が使われて帰還の魔法陣が発動しますから、……まぁ、発情できるほど魔力が貯まれば問題ないでしょう」


 アントンに言われて俺はふむふむと考える。ようやく魔力がこの辺にあるかなぁって分かるようになってきたところだ。魔法陣発動の目安か発情できるほどの魔力って、随分な話だけれど、まぁいいや。でも、発情してつがうって、何をするんだろう。多分俺の薄い記憶だと、エロい事なんだけど。


「発情したらつがえるの?具体的に、なにをするわけ?それとも俺がなんかされるの?」


 さぁ、具体的な話をしようじゃないか。エロいことだと言うのなら、そこは俺は覚悟を決めなくちゃいけないところだからな。


「えぇっと、まぁ。何かはされますね」

「具体的に」


 俺が詰め寄ると、アントンは困ってしまって目があちこちをみてさまよってしまった。


「ですから、まぁ、つがうと言う行為はですね。発情しているオメガの項をアルファが噛むことによって成立します」

「ま?」


 アントンの説明を聞いて、俺は俺はマヌケな声を出したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る