第21話 つがうって結構ヤバい


 つがうってなんぞや。と、改めて確認した俺です。ガリアスがいない隙にメイドさんにそれとなく聞いてみた。そしたら、だ。頬を赤らめながらメイドさんは教えてくれた。んだってさ。のっかてるってどんな状況?って、ウブな乙女では無いため、それとなく正解を頭に思い浮かべた俺です。当然俺も頬が熱く、いや、顔面が熱くなった。メイドさんはこれ以上は王子に聞いてください。なんで言っていなくなってしまった。


「まいったなぁ」


 この生活はなかなか楽しいから嫌では無い。むしろ、勇者みたいに痛い目に会うこともないし、聖女みたいに怖い思いをすることもないから、むしろラッキー要素が大きいと思う。俺の薄い記憶だと、発情するとエロいことしか考えられなくなるはずだ。まぁ、金髪イケメン王子ガリアスが、相手というのが救いのひとつではある。

 うん、年頃の男の子だもん俺。エロい事、興味ある。めっちゃある。むしろある。あるしかない。ないはずがない。


「よし、俺も任務完了目指して頑張るぞ!」


 拳を突き上げ、意思表明をしてみた。見ている人は誰もいないし、聞いている人も誰もいない。たぶん、メイドさんは何処かに控えているらしいから、見られているかもしれないけれど、それでもいいのだ。とにかく俺はやる。やってみせる。


「ケイタ、どうかしたか?」


 既に日課となった2人だけのお茶の時間、俺は金髪イケメン王子ガリアスをガン見していた。ほんと、絵本の中というか、映画スターと言えばいいのか、見目麗しく整った顔立ちをしている。オマケに、正真正銘の王子様らしく、お茶を淹れる手つきがなんとも優雅なのである。無駄がない。というか、自然に上品な手つきになっているのだ。俺が真似しようとしても出来そうにない。品格を感じる。そして、入れてくれるお茶がこれまた美味しい。今までメイドさんが容れてくれたのを飲んでいて、結構美味しかった。さすがはお城のお茶だよな。高級品の味化する。って思っていたんだ。


「ガリアスの入れるお茶は本当に美味しい。誰にも真似ができない味だよ」


 俺がそう言うと、ガリアスは少し照れたような笑みを浮かべた。またこんな顔も品があっていい。ほんの少し目尻にシワがよるのがまたいい。


「そうか、ケイタは俺の入れるお茶の味が気に入ってくれたんだな。さすがは運命というところか」


 ガリアスは目を細めて本当に嬉しそうな顔をして、そうして俺の髪を優しく撫でる。日課になってしまったからか、いつの間にかに俺はこんなことをされるのが嫌じゃなければ、恥ずかしくも無くなっていた。なんだかとても心地がいいのだ。手のひらで包み込むカッブの温かさと、寄り添うガリアスからの体温と、その温もりがなんともいえないのだ。


「運命、か。俺、召喚されたからにはちゃんと自分の任務を全うするからな」


 俺がそう言うと、ガリアスは驚いた顔をして、でも直ぐに笑ってくれた。


「任務、なのか?」

「だって、勇者が描いた漫画にあったんだ。魔法を使いこなして任務を完了させよう。って」


 そう言って俺は薄い本をガリアスに見せた。


「済まないケイタ。俺にはこの本は読めないんだ。勇者の魔法がかかっているからか、魔力で翻訳しようとしても出来ないんだ」


 悲しそうな顔をされて、俺は薄い本を引っ込めた。やるな厨二病。いや、さすがは厨二病と言うべきなのかもしれない。日本人に馴染みのある漫画を書いて、日本語を使い、更には日本人にしか読めないように魔法をかける。なかなかやるもんだな勇者。確かに、最後のページの帰還の魔法陣で元いた世界に帰ろう。っていうのは結構ヤバいかもしれない。つまり、長いはするな。生きて帰ろう元の世界へ、ってことなんだよな。うん、元の世界が居心地が悪くてこっちの世界に来たのなら、戻りたくない。って思うかもしれないけれど、ふとした瞬間に寂しくなっちゃうもんなんだよな。だって、死んでないんだからさ。俺がひとりで居なくなったあと、どうなっちゃったんだろう?って不安はやっぱりあるんだよな。

 だから、そう。任務完了したら、元の世界に帰ろうとしていることはバレちゃいけないことなんだ。


「そっか、ごめんな。この本書いた人が勇者だっからなのか、召喚されたからに与えられた任務を完了させよう。そのために魔法が使えるようになろう。って感じのことが書いてあるんだよ」


 俺はざっくりとした説明をした。実際、この本のおかげでオレは魔力がけっこう溜まっているのだ。へその辺にあ手のひらを当てて意識を集中させると、魔力を感じられるようになったんだからな。


「そうか、それでケイタは魔法が使えるようになったのかな?」


 ガリアスに聞かれて、俺は手のひらをガリアスに見せた。


「ほら見て、ほんの少しだけど水がだせるよ」


 俺の努力の成果。手のひらのくぼみにほんのわずかだが水が出せるようになった。もう少し魔力が増えれば、コップを水で満たすことができるとおもうんだよな。


「素晴らしい」


 そう言うと、ガリアスは俺の手のひらを舐めた。

 そう、俺が出した水を舐めとったのだ。


「ひっ」


 おもわずオレはちいさな悲鳴を上げたけれど、ガリアスは俺の手首を掴んだまま離そうとはしなかった。それどころか、ガリアスの青い宝石のような目が俺を捉えてている。


「え?なに?」


 ドクンドクンと俺の体の中が激しく鼓動を打ち鳴らした。


「なに?ねぇ、何が起きてるの?なんか、苦しいよ……ガリアス」


 苦しくて、俺は首につけららたガリアスの瞳の色の宝石を掴んだ。


「ケイタ、任務を遂行する時が来たよ」


 金髪イケメン王子が、ニヤリと笑った。

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