第四話 潜入

 4月27日。私達の新生活計画が始まる日。


 今私達はバスに乗っている。


もちろんトランスジェンダー支援館に行くためだ。


ここから数時間かかってトランスジェンダー支援館に着く。


バス内には、PCをいじってる人、朝っぱらから寝てる人など沢山の人がいた。


「今から、トランスジェンダー支援館に行きます。トイレは大丈夫ですか?次は30分後です。」

「大丈夫でーす」

「では...今から行きます。!」

「はーい」


運転手の合図とともに、バスが進んだ。


 今日はやたらと張り切っていて、途中で寝てしまった。そこまでしか覚えていなかった。




 気付いたときには、トランスジェンダー支援館に着きそうだった。

「かお!起きてー!おーい」

「え、私寝てたの?」

「そうだよ!せっかく最後だって言うのに...もうそろそろ着くよ」

「えー!?起こしてよー ていうか今何時?」

「午後の三時」

「もうそんなに...ていうかこんなに寝ちゃって今日寝れるの?」

「聞きたいのはこっちだよ!」




その5分後、トランスジェンダー支援館に着いた。


私達以外にも、200人くらいの人がいた。


「ここかぁ...ネットで見た時の時点で広かったけど、実際に行くと何倍も広いんだね」


 私の学校の面積の何百倍も広かった。面積は約100ヘクタール(1000000平方メートル)だそうだ。ここまで広いともはや、どれくらいの大きさなのか実感できない。



 トランスジェンダー支援館には、約7500人の人が収容されるらしい。


一番凄いのが、トランスジェンダー支援館は一つだけではなく、福井県内に数か所あるのだ。もちろん、他の滋賀県や三重県にも。

 だから、トランスジェンダー支援館にいる人は合計100万人超えてるとかなんとか。


「では皆さん、説明を始めます。まずは、各部屋を紹介します。部屋はとても広いので、迷子にならないようにしてください。」

「はーい」



 先生に従ってついていく。迷子にはなるなとは言っていたけど、こんな広い空間の中で迷子にならない方が凄いと思う。

 200人以上いるのに、ぎゅうぎゅうになってないから、それほど大きいんだなと思った。


「まず、皆は自分の寮に入ってもらいます。ここにいる全員は、Bクラスに入ります。」

「他にも、AクラスやCクラスがありますが、そのクラスへ行くには20分くらいかかるので、行かないようにしてください。」

「そして、このクラス内にも、寮があります。他の先生に従って、自分の寮に入って荷物を置いてください。」


 私達は先生に従って自分の寮に来た。私の寮は3-7班だった。

メンバーは私含めて5人ほどいた。そのうち一人は、、、


「あ、アオイ!ちゃんと一緒になれてよかった!」


 私は説明会の時、先生に「アオイと一緒になりたい」って言っといたので、アオイと一緒の寮にいることができた。


 とりあえず持ってきた荷物を置いた。五人分のベッドと、ユニットバスがあった。

ホテルの部屋みたいだった。


 数分後、みんなが荷物を置き終えたため、次の場所に行くことになった。


「ここが勉強部屋です。ここでは、図書カードを使い本を借りることができますが、期限内に本は返してください。それでは、今から図書カードを渡します。無くなさいでくださいね?」


『3-7班 米内山 香織』と書いた図書カードが渡された。


無くさないようにともう一回寮に戻ることになった。


途中、疲れたと愚痴を言っている人もいたが、私もそう思った一人だ。

なにせ、私達はこんなに広い空間を数十分ほど動いているのだ。


 先生も流石に疲れたと思ったのか、「寮でしばらく休憩してもいい」と言ってくれた。



せっかく時間がとれたため、アオイとについて決めることにした。



「とりあえずトランスジェンダー支援館に来たけど、どうするの?(小声)」

「まあ、情報収集しなきゃだよね(小声)」

「どうやって情報収集するの?(小声)」

「えーとそれはー...」

「ちょっと...それって」

「無計画じゃん」「無計画だろ」




「え?」



「誰え!?」「盗み聞きは良くないよ!」



「同じ寮の奴にそんな風に言われるって酷くない?」

「ん...?あー!同じ寮の人だっけ!」

「同じ寮の人じゃなくて二条にじょう 晴瀬はるせだ。人の名前くらい覚えていてくれよ...」

「あーごめん!私の名前は田岸 碧衣!」

「私は米内山 香織だよ」

「碧衣と米内山だな」

「ちょっと!なんで私だけ名前呼び?」

「そうゆうことじゃねえよ...」

「じゃあどうゆうことー?!」



そんな風に話をしていたら、休憩時間が終わって、次の場所移動に入った。



「ここは、食堂です。普通の食堂を同じように、お金を払って食べます。」

「今から、そのお金について説明します。」

「まず、トランスジェンダー支援館では、勉強制度があります。」

「その勉強制度について簡単に説明すると、今日は何ページかやって、明日何ページやるか決める。そして、明日が期限内な場合は、明日までに自分でやるページ数を決めて、勉強部屋の「自主学習BOX」にやってきた課題を提出する。」

「ちゃんと提出できたら、一週間後にお金が手に入る。貰える金額はやってきた課題によって変わる。という制度です。」

「もちろん、期限内に提出されなかったらお金は手に入りません。」


「しかし、今勉強をしたとしてもお金が配られるのは一週間後なので、先に一万円分お金を渡しておきます。無くさないでくださいね。」

「はーい」

「それと、もうすぐ5時なので、夜ごはんを食べる時間にしたいと思います。」

「初めの一週間は慣れるために一斉に食べますが、一週間過ぎた頃からは5時になったら夜の8時までは食べていいです。」

「それでは、20分後に食事をするので、渡ったお金で食べるものを決めておいてください。」


 お金が渡ったと同時に、皆が学食を注文し始めた。


 メニューはとても多かった。ざっと500種類ほどあったため、飽きることはほぼほぼないと言えるだろう。

 それに加えて、メニューの種類も豊富だった。カレーやラーメンの定番食や、地域ごとに食べ物のあったため、選ぶのに時間がかかった。


 結果的に、今日は唐揚げとサラダと白米の比較的健康な食事に決まった。


「皆さん!食事は決まりましたか?今日は記念すべき一回目の食事です。」

「それでは、手を合わせてください。」

「「「「いただきます!」」」」


皆が一斉にご飯を食べ始めた。正直、こんなに多くの人がいるところで食事をするのは久しぶりだった。そう思い、私もご飯を食べ始めた。


「それでは、先生たちは部屋の点検に行ってくるので、ゆっくり食べていてくださいね。」

「はーい」



呑気に食事をしていた時に、先生たちが何をしていたかなんて、この時の私達には知る由もなかった。

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